富士通、2023年度決算は増収減益--今後の変革を左右する2つのビジネス
好調なFujitsu Uvanceについて磯部氏が課題に挙げたのは、収益率の向上だ。現在、Verticalオファリングのグロスマージン率は30%台半ばであり、Horizontalは20%半ばだという。「SIの営業利益率にまだ達しておらず、十分な水準ではない。全体の営業利益率の足を引っ張っているのが現状」とする。 だが磯部氏は、これも事業規模の拡大により改善が図れると見る。「パイを増やすことで、グロスマージン率も高水準を狙えるようになる。2025~2026年に40%強の水準を目指している。7000億円規模になれば、利益を押上げる側に変わる」と磯部氏。7000億円という数字は、Fujitsu Uvanceで目指す2025年の売上収益目標だ。中期経営計画の最終年度までに、7000億円という売上収益規模を実現することが、Fujitsu Uvanceの収益性の改善につながるというわけだ。 もう一つの課題を上げるとすれば、Fujitsu Uvanceを成長させるための投資が増えていることだ。それが、全社の利益目標達成のハードルを高める可能性がある。 磯部氏は、「Uvanceビジネス、コンサルティングビジネス、モダナイゼーションビジネスの持続的な拡大に向けて、今は投資を行っていく必要がある」と語る。2023年度は、サービスソリューションの成長投資として前年より214億円増加させ、Fujitsu Uvanceのオファリング開発や人材育成、セキュリティ強化など、成長に直結する投資を積極的に進めてきた。 これに加えて2024年度は、さらに前年比520億円増の成長投資を計画する。ここでは、引き続きFujitsu Uvanceのオファリング開発の費用を拡大するほか、コンサルティングケイパビリティーの拡充に向けた投資を大きく増やす考えだ。実は、2024年に投資を開始するコンサルティングケイパビリティーの拡充は、Fujitsu Uvanceの事業拡大に直結する取り組みになる。 富士通は、2024年2月に、富士通のコンサルティングサービスの事業ブランドとして、「Uvance Wayfinders」を発表。ビジネスコンサルティングとテクノロジーコンサルティングの両軸からコンサルティングを行うもので、富士通が中期経営計画で推進している事業モデル変革の「最後のピース」とも位置付けている。そして、Fujitsu Uvanceの売上収益7000億円の達成に不可欠となる。ここでは、コンサルティングスキルを持つ人材を現在の約2000人から2025年度までに1万人規模に拡充する計画を発表している。 時田氏は、「Uvance WayfindersがFujitsu Uvanceの先導役になる」としながら、「富士通は、ビジネスコンサルティングに加えて、もともとの強みであるテクノロジーによるコンサルティングを組み合わせることで、新たな事業機会の創出を狙う。12万4000人の社員を擁する富士通グループには多様な人材がいる。その10%はコンサルタントとして、お客さまのお役に立てる素養を持つことになる」とする。磯部氏も「社内でのリスキリングや外部採用により、かなりの短期間で1万人体制にしたい。このリソースがしっかりと育てば、Fujitsu Uvanceの売り上げ拡大にも貢献する」と語る。 2024年度においては、コンサルティングケイパビリティーの拡充として、200億円強の投資を予定しており、半分が人材確保のための投資、残り半分がリスキリングのための投資になるという。「積極的な投資により、2024年度は増益幅が鈍化するのは明らかだ。だが、ここでリソースへの投資に対してアクセルを踏まなくては、2025年度以降の売上成長に影響することになる。今はコンルティングケイパビリティーの強化に向けて、しっかりとアクセルを踏むことが大切である」と磯部氏は言い切る。コンサルティング人材をしっかりと確保し育成できるかどうかが、Fujitsu Uvanceの成長戦略に大きく影響することになるというわけだ。