サンゴ礁と一体化した石器、切り取られてなくなる…鹿児島・喜界島の「縄文時代を知る手がかり」
鹿児島県・喜界島の海岸で、サンゴ礁と一体化していた縄文時代のものと推定される石器が切り取られ、なくなっていることが分かった。同様の石器はほかにも島内6か所で確認されており、喜界町は保存に向けた検討を始めた。(鹿児島支局奄美通信部 園田隆一) 【写真】石器が切り取られた跡(今年8月撮影)
町教育委員会埋蔵文化財センターによると、なくなった石器は島西部の海岸のサンゴ礁に埋まっていた。赤みを帯びており、大きさは大人のこぶし大程度だった。センターの松原信之主査が今年3月、現地で石器の部分だけが四角に削り取られているのを確認した。今秋に町の広報誌で情報提供を呼びかけたが、石器の行方や切り取った人物は今も分からないままだ。
島は約10万年前にサンゴ礁が隆起してでき、現在も年2ミリほど隆起が続く。海岸付近のサンゴ礁が4000年以上前のものであることから、町は「海に落ちた石器が長い年月をかけて周囲のサンゴと一体化し、地上に現れた」とみている。
現場は鋭くとがった岩が続く足場の悪い海岸線。近くに石器の存在を示す案内板はなく、島内でも知る人は多くないという。
松原主査は「縄文時代の活動の様子を知る手がかりになる貴重な遺物で、なくなったのは残念。他の石器を守るため、保護の仕組みづくりや周知活動に力を入れていきたい」と話す。
町は来年2~3月に開かれる町文化財保護審議会で文化財指定の可能性を含め対策を検討する。