【PFF×若手クリエイター】「わたしの映画づくり」村田夕奈さん
「映画祭はチャンスを掴めるかもしれない場」
初めての映画づくりの感想は? 「本当に楽しかったです。いろいろと噂が広まって、学校中がお祭り騒ぎのような状態になりました(笑)。クランクアップとなる屋上でのラストシーンを撮って、映像を確認してOKとなった瞬間は、本気で『生きててよかった』と思いました」 こうして完成した『可惜夜』は、「高校生のためのeiga worldcup2021」に入選すると大きな反響を呼び、その後、MOOSIC LAB 2023でも特別招待上映されることになる。 「『高校生のためのeiga worldcup2021』は、YouTube限定公開で鑑賞する形式だったんですけど、初日の再生回数の伸びがすごかったんです。それこそ最初は自分の目の届く範囲内で、友人や知人からダイレクトメッセージが届いて『みんなみてくれているんだなぁ』と思っていたんです。でも、少ししたら、もう友人関連の範囲では収まらない再生数になり、まったく知らない人たちから長文のコメントが続々届いて、気づけば公開1日目で1,000回を突破していました。信じられなかったです。『作品は自分の子ども同然。でも、公開されると観客のみなさんのものになって親の手を離れて成長していく』といった主旨のことをよくおっしゃる監督さんがいらっしゃいますけど、『こういう感覚なのかな』と思いました。それから、どちらの映画祭での上映でも自分の伝えたかったテーマや表現したかったことを、多くの方がきちんと受けとめてくださっていた。そのこともすごくうれしかったです」 今後の映画づくりに向けて大きな自信をくれた映画祭での上映。ただ、実は映画祭への出品は「高校生のためのeiga worldcup2021」のみだったという。その理由をこう明かす。 「『高校生のためのeiga worldcup202』に関しては、高校生という同年代の間で評価を受けることになる。でも、ほかの映画祭となると、あらゆる世代と比べられてのことになる。そうなると辛辣なことを言われることを覚悟しなくてはならない。私自身はそれを受け入れられる。でも、一緒につくった仲間の中には『可惜夜』が最初で最後の映画になるであろう子も大勢いる。だから、できるだけ作品を傷つけないで、いい思い出として残したかった。それでほかの映画祭には応募しませんでした。ただ、出品が無料だったらちょっと違ったかも(笑)。高校生にとっては3000円、4000円でも痛い出費。それが無料になるのは大きいです。私の中でPFFは自分の実力がある一定に達しないと出せないと意識する大きな映画祭。でも、当時、無料だったら、『力試しで』と応募していたかもしれません。映画祭はチャンスを掴めるかもしれない場。無料であれば失うものはなにもないので、臆することなく多くの10代にチャレンジしてほしいですね」 その後、高校の卒業制作作品と自身で位置付けて完成させた『自画自讃』はMOOSIC LAB 2024で上映に。いまは大学で映画を学びながら、映画監督の道を模索している。 「『可惜夜』の上映の中で、うれしいことに同年代のみならず大人世代からも温かい言葉をかけていただいたんです。独学で初めてつくった映画ですから技術的に未熟で欠点や粗があるのは確か。自分のつくりたい映画は『これ』という強い気持ちで完成させましたけど、自信なんてなかった。だから上映のときは、『時間があったらみてください』『温かい目でみていただければ』みたいな感じで。正直な話、ダメ出しばかりされるのかなと考えていました。でも、実際は『自信もっていいよ』とか『頑張ったね』とか私を勇気づけてくれる言葉をいっぱいいただきました。今は、その時の言葉を励みに、頑張って映画をこれからつくっていこうと思っています」 「第46回ぴあフィルムフェスティバル 2023」 9月7日(土)~21日(土) ※月曜休館 会場:国立映画アーカイブ(京橋) 取材・文:水上賢治