<令和に歴史を刻め>選抜2校の進撃 第1部/下 明豊 雪辱胸に目指す頂点 /大分
1999年の創部以来、春夏通じて過去9回の甲子園出場を誇る明豊。古豪の大分商、津久見を抑えて2年に1度のペースで全国の切符を手にする明豊は、今や県高校野球界をけん引する存在だ。昨春のセンバツでは初のベスト4入り。今回は72年の津久見以来、48年ぶりの全国優勝を目標に掲げる。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 新興の明豊が全国と対抗してきた強みは、強力な打線だ。これまで9回の甲子園で、零封されたのは、2009年春に菊池雄星投手(現シアトル・マリナーズ)を擁した花巻東(岩手)に敗れた時のみ。打ち勝って、試合を制するのが明豊の必勝パターンだ。 新チームの結成後、今回のセンバツ出場の決め手となった秋の九州大会では、全4試合で43得点を挙げた。1試合平均10点以上、チーム打率3割9分6厘の攻撃力が九州制覇につながった。 秋の大会では、レギュラー全員が打率3割超え。「上位から下位打線まで切れ目ない打線が、うちの自慢。相手に息もつかせずプレッシャーをかけ続けたい」と川崎絢平監督は話す。 打撃が向上した背景には、基本の見直しがある。「これまでは素振りは一切していなかった」と居谷匠真捕手(2年)は言う。新チームを結成してから、打者全員が素振り300本をこなすことをノルマにした。 攻撃の柱となった3番・布施心海選手(同)は、秋の大会で打率4割2分9厘、本塁打4本、14打点と爆発。「スイングスピードが速くなり、打球の飛距離も伸びた」と手応えを口にする。 打撃の基礎を身につけた上で、川崎監督が繰り返すのは、自分のスイングをすることだ。どんな投手のどんな球でも、自分の打撃が崩されなければ、いつか突破口が開ける――。強力打線の背景には、そんな明豊の哲学がある。 「アウトになってもいい。自分のバッティングを見失うな」と川崎監督も選手を鼓舞する。 チーム練習では、1日にティーバッティング500本2回、フリーバッティングなど200本をこなすことも。ぶれない体の軸を作るために、15種類の体幹トレーニングも欠かさない。その後、選手たちは自分の限界を超えるために自主練習に励む。 前回大会では、優勝候補の横浜(神奈川)、春夏最多出場の龍谷大平安(京都)などを破って明豊最高のベスト4まで進出したが、習志野(千葉)に敗れ涙をのんだ。 3点を先制したのにもかかわらず、八回に逆転されて追いつけなかった。あと一本が出れば――。選手たちはその悔しさを忘れていない。 投手でありながら3割3分の打撃を誇る若杉晟汰主将(2年)は「自分たちはどこからでも点の取れる強力打線を磨いてきた。一球一球フルスイングして、日本一を取る」と誓う。 狙うは、ただ一つ。初の頂点だ。【河慧琳】