「どうなっていきたいか、どうなりたいかは自分次第」井口裕香が体づくりから学んだこと
声優・井口裕香のおよそ12年ぶりとなる写真集「MORE MORE MORE」は、彼女が理想とする女性の美しいボディラインや大人な表情をふんだんに盛り込んだ、まさに挑戦となる一冊となった。また一方で本作は、その理想に近づくために自身をとことん追い込んだトレーニングや食事制限などのたまものでもあった。そうした新たな挑戦の結果、彼女の生活やメンタリティはどのように変化していったのか。体だけではなく心も美しく磨き上げた井口裕香のライフスタイルの変化について話を聞いた。 【写真を見る】井口裕香の最新写真集 ■ぐっと我慢して、「一生食べられないわけじゃない!」と言い聞かせていた ――井口さんのライフスタイルについて、もう少し深掘りしていきたいと思います。写真集に向けておよそ3か月の間で体づくりをされたわけですが、いわゆるダイエット的なものとしても大きな変化があったんですよね? 10キロ減りました。体脂肪もだいぶ減りました。 ――10キロという数字もさることながら、女性の方がそれぐらい減らすというのもすごいですよね。 そう、女の10キロは大変なんですよ。しかも筋肉も残したいところを残しながらのダイエットは本当に大変です。 ――運動はジムが中心だと思いますが、普段の生活習慣も変わったのでは? 変わりました。まずは食事ですね。ゆで卵とか、調味料もあれこれ使わずに、料理というよりかはもう素材を食べていましたね(笑)。 ――それこそトレーニーが摂る食事のような。 でもお肉はオッケーにしていました。女の子は脂質をあまりに絶っちゃうと、お肌がカサカサになっちゃったりするので、豚肉はそんな食べなかったけど、牛や鶏とかお肉は積極的に、朝昼晩いつでも食べるようにはしていました。ただお米とか炭水化物を夜は絶対摂らなかったし、一時期はパンやパスタも控えてたりしていました。あと私、コーヒーが大好きなんですけど、カフェに入ると魅力的なショーケースがあるじゃないですか(笑)。 ――ケーキやお菓子が入っているやつですね(笑)。 それを見ながら「みんないいな……」って思いながら(笑)。 ――井口さんもお菓子はお好きですよね? はい、もう1個と言わず、2個3個食べるタイプの人間だったので(笑)。そこを一度ぐっと我慢して、「一生食べられないわけじゃない!」って言い聞かせて、「いつか食べるぞ」と。 ■「わーい!」って食べるふりして、持参した冷凍焼き芋を食べていました ――とにかく我慢するという精神力が大事なわけですね。しかも井口さんの場合、お仕事も深夜のラジオがあったりと時間帯がさまざまなじゃないですか。そこでのコントロールも大変そうだなと。 そうですね。でも仕事の合間にトレーニング入れて、そこでリフレッシュしてまた夜の現場へ行ったりしていました。もともと運動好きだったから、それは全然苦じゃなくて。でも、やっぱり食事は大変でしたね。食事だけは本当にどうなることかと……(笑)。 ――現場でも魅力的な差し入れもあるでしょうし。 それこそ、ちょうどお菓子が題材になっている作品に参加していたりして、共演のみんなが休憩中に「わーい!」って食べているのを、私も「わーい!」って食べるふりして、持参した冷凍焼き芋を食べて(笑)。 ――冷凍焼き芋は優秀な減量食と聞きます(笑)。そこでも我慢が発生するわけですね。 でも人とのご飯の場で、みんなが食べているときに私だけまったく食べないっていうのもナンセンスだなと思っていて。みんなと違うものを食べているけど同じ感覚で楽しくいるようにしていたし、全然自分もしんどくはなかったんですよ。みんなと夜ご飯を食べに行くときも、その中で自分が食べられるものを食べていたり。あとは自分でお店を決められるときは焼き鳥屋さんに誘って、みんなはタレで食べるのを、私は塩で味薄めにしてもらって食べていました。 ■気持ちも前向きになって、出かける場所の範囲もいろいろ広がっていった気がする ――周囲との関係を変化させずに、細かい工夫を重ねるというのも長く続けるコツであると。ちなみにそうした体づくりの末の、周囲からの見られ方に変化はありましたか? 今までは、体のラインが出るような服は私服で着てこなかったんですよ。なので痩せたこともそんなに気づかれなくて、いいんだか悪いんだか(笑)。ジムに行ったときはタイトなレギンスを履いてウェアを着たら体型が出るから、目に見えて自分では痩せたというのが感じられたんですけど、10キロ痩せたところで、敏感な人は「痩せた?」って言ってくれるけど、基本的にはあまり言われなかったですね。 ――それじゃあ、写真集発売の発表があって注目されるような? そうですね。そのときは結構びっくりされました。 ――またインスタグラムのストーリーでも、ワークアウト中にデヴィッド・ゲッタなどEDM系の音楽を流していましたが、ご自身の趣味などの変化はありましたか? 音楽は元々ハウス系が大好きで、運動始めてより聴くようにはなりました。あと洋服のチョイスはだいぶ変わりましたね。今まではワンピースでふわっと体のラインを拾わないような服を選んでいたんですけど、痩せてからはタイトな服も着るようになったし。それこそ最近は、大人になって初めてデニムを買いました。 ――ジーンズもあまり履いてこられなかったんですか? 今までパンツとかはお尻や体のラインが出る感じがして着る勇気がなかったんですよ。それで最近ちょっと買ってみたんですけど、それで洋服の幅が広がりましたね。それで幅が広がると気持ちも前向きになって、出かける場所の範囲もいろいろ広がっていった気がします。 ――体づくりによって見せ方も変わったけど、何より心持ちに大きな変化があったと。 行くお店も変わり、そこで出会う人も変わっていきましたね。現場でも「トレーニングしてるんだね」という話題から、話す人たちの輪がどんどん広がったりしましたし。 ■やっぱりお尻は育てがいがあります ――写真集をきっかけに始まった体づくりですが、それはさまざまな影響があったんですね。それにしても、それを35歳というタイミングで達成できたことはすごいなと。 代謝も落ちる30代でよく頑張った(笑)。 ――それって大人になっていくにあたって、年齢ともいい向き合い方ができているのかなと。 そうですね。自分が20代の頃は、35歳ってすごく大人に感じてたんですけど、いざ自分が35歳になってみると、そんなに変わらないと思っていたんですね。見た目もそうですけど、お芝居もそうで。特に声優さんでも、ずっと変わらず活躍されている先輩ってみんな若いじゃないですか。だから、自分もそういう憧れて見てきた先輩たちみたいにずっと若々しくいたいし、お芝居だけじゃなくて肌とか姿勢の良さとか、背中で語るじゃないけど姿勢で語れるものがあったらいいなと思って。それもあって、年齢はいい意味でそんなに意識しなくなったというか、逆に言うと「35歳だけど、この服着ちゃうもん!」みたいな。 ――ナチュラルな向き合い方は大事ですよね。これは同世代、特に同性の方からの共感も大きいと思います。今からでも変えられるという気持ちを持つというか。 あきらめたら、そこで試合終了なんです(笑)。努力すれば、継続すれば筋トレもちゃんと力になるように、お仕事とかも積み重ねていけば力になるように思います。どうなっていきたいか、どうなりたいかは自分次第だなと思うので、それをお仕事に対しても、今回の体づくりに対してもすごく実感したことでもあるし、自分の中でもそう思ってずっと頑張っていきたいなと思います。 ――ちなみに、写真集に焦点を当てて体づくりをしてきましたが、今後のトレーニングはどうお考えですか? トレーニングは今も続けています。撮影が終わったという解放感から食事も……主にお酒ですけど(笑)。あ、あとドーナツに一時期ハマっていました。でも食を楽しみながらも、運動も引き続き頑張っていきたいですね。むしろお尻に関しては、多分この撮影のときより今のほうがより仕上がってると言えるくらい。やっぱり私の理想とするのはこう、まるっとした形っていうのが大事なので、そこの丸はどんどんこう増してきています。 ――今もなお進化しているわけですね。 やっぱり育てがいがありますね。盆栽と同じです(笑)。 (取材・文=澄川龍一)