東京ドーム公演急増の背景とは? 市場やトレンドが変化する一方で大規模会場不足に懸念も
JUJU、オードリー、BAD HOPのドーム公演で軽減されたコスト
また、ドーム公演増加の背景には機材や演出の進化もある。特にLEDビジョンの目覚ましい大型化と高解像度化は大きい。かつては一番後ろの客席からステージを見るとアーティストが豆粒のようにしか見えなかったが、ビジョンによって一体感と没入感のある空間演出が可能になったことでオーディエンスの体験価値が上がったことも見逃せない。 複数のライブやイベントで同じステージ設営を使用する動きも進んでいるようだ。2月17日にはJUJUのデビュー20周年を記念したライブ『スナックJUJU 東京ドーム店 ~ママがJUJU20周年を盛大にお祝い!! 一夜限りの大人の歌謡祭~』が開催された。翌18日には前述のオードリーが、19日にはBAD HOPが東京ドーム公演を行っているのだが、『BAD HOPのオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)で語られたことによると、JUJUとオードリーとBAD HOPでセットや機材を共用することで会場費用を抑えることができたのだという。 この後も東京ドームでは、COMPLEX(吉川晃司と布袋寅泰)、YOASOBIなど、モニュメンタルな公演の数々が行われる予定だ。ただ、当然、開催できる公演数には上限はある。そもそも東京ドームは野球の試合が主に行われる場所だ。 長期的な先行きを考えると、東京における数万人規模の会場の不足という新たな問題が表面化する可能性もある。国立競技場や日産スタジアムや味の素スタジアムはあるが、5万人以上を収容できる首都圏の全天候型多目的スタジアムというと、今のところ東京ドーム以外には見当たらない。そして、その東京ドームもすでに築35年以上を迎えており、そろそろ老朽化から建て替えの準備を見据える時期となっている。 野球やサッカーなどのスポーツ産業だけでなく、ライブエンタテインメントにとっても、都市圏におけるスタジアムやアリーナの整備は今後さらに重要な局面を迎えていくのではないだろうか。
柴那典