【イチから解説】車なしでも暮らしやすい地域へ~交通インフラ革新~
日テレNEWS NNN
今回の「イチから解説」は、経済部の宮島香澄解説委員とともに「車なしでも暮らしやすい地域へ」ということで、交通インフラの問題を考えます。 生活するためにとても重要な「移動の手段」。8月末は、地方の公共交通についてのニュースが相次ぎました。 栃木県では、宇都宮市と芳賀町を結ぶ次世代型の路面電車=LRTが開業しました。国内の路面電車開業は75年ぶり、しかも全線新設、これは全国で初めてです。 鉄道とバスの間のような役割で、床が低くのりやすい。車が使えない人に便利だそうです。地方都市の効率的でコンパクトな町づくりを目指して開業しました。
九州豪雨の被害をうけた北九州では、JR日田彦山線で元の鉄道の路線も使ってバスを走らせるBRTが運行を開始しました。専用レーンなどを使うのでバスより時間通りで、電車より停車ポイントが3倍に増え、地域の人達に好評だということです。 でも、地方を旅行すると、とてもすいている電車やバスに乗ったりすることがありますよね。地方で、鉄道やバスの多くが採算がとれてなくて危機的な状況もあるんです。 JR西日本は去年4月、運行に必要な費用に対して、収入がわずか0.4%しかない線区があると公表しました。0.4%、つまり10万円かけて運行しても400円の収入しか得られないということです。 JR東日本でも、収支率が0.5%の線区がありました。こうした苦しい地域の交通について、14日、運輸総合研究所の検討会が提言を発表しました。
提言では、地域の交通事業の状況を3つにわけて示しました。 ・Aは公的補助がなくとも民間がサービス供給できる ・Bは民間のサービスはできるけれど、一定の公的補助が必要 ・Cは民間によるサービス供給が成立しない
例えば、岡山県だと「公的な補助なし」でも良いAの地域はなく、県庁がある岡山市や倉敷市などがBの地域、残るはCの地域、つまり民間のサービスが成立しないと分析されているんです。 分析した9県のほかのところでも地方の相当多くの地域で民間によるサービスが成立しない、と分析されているということです。 背景は、【車の活用が広がったこと】と【人口減少】に加え、最近の【新型コロナ】で移動そのものが減り、危機的状況です。今回の提言は、誰でも使える移動の足はその地域の「未来を決定づける基盤」なのに、その認識が足りないと指摘しています。 地方ではバスの便数やタクシーもどんどん減っていますので、このままではサービスは続かないと危機感を持つ必要があります。