勝敗分けたフェンス際 明豊・阿南、執念の好捕 選抜高校野球
第93回選抜高校野球大会は第9日の29日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で準々決勝が行われ、第91回大会(2019年)4強の明豊(大分)が昨秋の近畿大会優勝の智弁学園(奈良)を破り、準決勝進出を決めた。明豊は阿南心雄左翼手(3年)の好守などで一度もリードを許さず、6―4で逃げ切った。 【明豊vs智弁学園の試合を写真特集で】 捕球後の記憶がなかった。目を開けると、三塁塁審が駆け寄ってくるのが見えた。左手の黄色いグラブで白球を握りしめていた。うつぶせの状態でグラブを少し挙げると、塁審が右手を挙げてアウトのジェスチャー。大きな拍手の波に包まれた。勝敗を左右するファインプレーをみせたのは、「自分にはセンスがない」と自虐的に話す明豊の左翼手・阿南だ。 六回。2点差に迫られ、なおも2死一、三塁。目線の先に4番・山下の強烈な打球が飛んできた。「うわあ、(頭を)越された」と観念しかけながらも懸命に背走。大きくジャンプしグラブの中にボールが入ったのを見届けた瞬間、左翼フェンスに激突した。倒れ込んだのも「覚えていない」。しかし、フェンスにぶつかった勢いでつかんだボールがこぼれないよう、無意識でグラブを立てて放さなかった。最大5点差から追い上げてきた近畿王者の勢いを封じ、智弁学園の小坂監督に「勝敗を分けられた部分」と悔しがらせた。 元々は遊撃手だった阿南だが「守備が下手で(昨秋から)外野に回された」。昨秋の公式戦では無失策だったが、不安が残った。冬場は練習後に毎日50~100球、コーチにノックを打ってもらい、さまざまな打球を捕る動きを体に覚え込ませた。まだ苦手意識は残るが、「うまくやるんじゃなく、しっかり球にくらいつこう」と意識している。六回の場面もフェンスが近づいていることも一切考えず、白球しか見ていなかったからこそ飛びつくことができた。 川崎監督は「このチームを象徴する執念のプレー」とたたえた。1回戦は打ち勝ち、2回戦では投げ勝ち、そして準々決勝で守り勝った。例年は強力打線が看板のチームだが、今年のチームの色は実に多彩だ。【安田光高】 ◇全31試合を動画中継 公式サイト「センバツLIVE!」では、大会期間中、全31試合を中継します(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2021)。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/senbatsu/)でも展開します。