能登地震で開業3カ月延期の「黒部キャニオンルート」 紅葉シーズンに向け復興シンボルへ
富山県の黒部峡谷鉄道(路線距離約20キロ)の終点・欅平(けやきだいら)駅と黒部ダムを結ぶ関西電力の工事用輸送路(同、約18キロ)を見学できる「黒部宇奈月キャニオンルート」の一般開放が、能登半島地震の影響で当初予定の6月30日から「10月1日ごろ」に約3カ月延期となった。夏の行楽時期に間に合わないことは痛手だが、秋の紅葉シーズンの集客に期待をかける。「北陸」の魅力を発信することで、被害の大きかった能登の復活を周辺から支える経済効果も期待される。 ■橋げたや枕木損傷 6月の開業に向けて着々と準備を進めていたキャニオンルートの関係者らに衝撃が走ったのは、地震2日後の1月3日。 「トロッコ電車」の愛称で親しまれている黒部峡谷鉄道の起点の宇奈月駅から黒部川上流へ約14キロの「鐘釣(かねつり)橋」で、橋げたや枕木などの損傷が確認された。運営する関電子会社の黒部峡谷鉄道が調査したところ、沿線の東鐘釣山からの落石が原因で、地震によるものとみられるという。 雪解けを待って東鐘釣山の落石防止対策工事を実施する予定で、当面は宇奈月駅から鐘釣橋の下流側まで折り返し運転することを決定した。4月19日~24日は笹平駅まで、25日~9月30日ごろまでは猫又駅までの折り返しとなる。工事が7月中旬ごろに完了することを前提に、鐘釣橋復旧工事は9月中の完了、全線開通は10月1日ごろを目指す。 キャニオンルートの運営主体の富山県は黒部峡谷鉄道と組み合わせた旅行プランを企画しているため、同ルートの一般開放についても10月1日ごろまで延期することを余儀なくされた。当初は1月29日の旅行プランの販売開始を予定していたが、「7月上旬までに開始」と見直しを迫られた。 ■圧巻のインクライン キャニオンルートは、昭和15年に旧日本電力が運用開始した黒部川第3発電所、38年に関電が黒部ダムとともに完成させた黒部川第4発電所(通称・くろよん)の工事のために掘られたトンネルを、工事用トロッコ電車や蓄電池機関車などの特殊車両で走る。 途中の展望台からは北アルプスの山々を望める。吉村昭の小説「高熱隧道(ずいどう)」で知られる、多くの犠牲者を出して掘り進められた高熱の岩盤を通過。長さ815メートル、斜度34度の急傾斜を20分かけて昇降する「インクライン」も圧巻だ。