イチからわかる発送電分離
電力の小売り自由化など電力システムの改革を目指す電気事業法改正案が、10月30日に国会で審議入りしました。今年前半の通常国会で与野党対立のあおりで廃案になった法案が、再び提出されたのです。 注目点は、いま電力会社が運営している発電部門と送電部門を、別々の会社に分けることです。この「発送電分離」とはどういうもので、私たちにとってはどのようなメリットがあるのでしょうか? Q&Aで解説していきます。 Q.そもそも発送電分離って、どういうこと? A.いま、電力会社は、電気をつくる「発電事業」、電気を送る「送電事業」、家庭や工場などへ電気を届ける「配電事業」をすべて行っています。発送電分離は、そのうち発電事業とそれ以外の事業を分離することです。 Q.分離することでどんなメリットがあるの? A.だれでも公平に送電網を使って配電を含む送電事業が行えるようになれば、新たな発電事業者が参入できます。そうなれば既存の電力会社の地域独占が崩れ、電気料金が安くなるというメリットが考えられます。 また、消費者の選択肢が増えるため、風力、太陽光、地熱など再生可能エネルギーだけで発電した電力を売り物にする事業者が参入する可能性も広がります。 Q.海外では進んでいることなの? A.発送電分離をいち早く実施し、90年代に電力料金の大幅引き下げに成功したイギリスをはじめ、ヨーロッパでは国境を越えた電力取引も活発に行われています。アメリカでも一部導入されています。 Q.日本ではなぜ行われてこなかったの? A.日本では、第二次世界大戦後に制定された「電気事業再編成法案」により、電力9社(現在は10社)による地域独占体制がつくられたことが、発送電分離をむずかしくしてきました。 1990年代には電力自由化が始まり、発電事業へ新規参入新規事業者も現れましたが、送電の際に既存電力会社の送電網を使わざるをえず、電力会社に支払う送電網使用料(託送料)が割高なこともあって、その販売電力シェアは3%台にとどまっているのが現状です。