増え続ける薬の包装シートを資源として利活用する「おくすりシート リサイクルプログラム」とは?
薬の錠剤が入ったおなじみのシート、これを市民から集めてリサイクルしようという日本初の試みが、横浜市で本格展開されている。およそ1年半でなんと約3t、300万枚相当のシートが回収されたというのである。 【調査結果】美容室1回あたりの平均利用金額、女性は7482円、男性は? 「おくすりシート リサイクルプログラム」と名付けられたこの活動は製薬会社の第一三共ヘルスケアがスタートさせた。その発想、実現までの創意工夫とブレイクスルー、そして自治体との連携に至る背景と結果について、2回にわたって紹介する。 まず話を聞いたのはプロジェクトの中心を担った一人、第一三共ヘルスケア サステナビリティ推進リーダー 阿部 良さんである。
“動脈”そして“静脈”への挑戦
2006年、第一製薬と三共のコンシューマーヘルスケア事業を統合し、発足したのが第一三共ヘルスケア。 昨今の循環型社会のニーズもあり、環境に配慮した取り組みを加速させようと、同社でサステナビリティ推進委員会が立ち上がったのは2019年。各部署からスタッフが招聘され、阿部 良も発足当時からのメンバーの一人となった。 これまで薬の添付文書の紙を入れず、パッケージに印刷したり、環境対応インクを使ったり、森林の生物多様性等を守るFSC承認紙を使うなどの取り組みは進めてきた。だが、 「“動脈”と“静脈”という考え方がある。“動脈”は製造、“静脈”は回収・リサイクル」 「そのへんはあまりはっきりと意識してこなかったね」 「“静脈”の分野にチャレンジするリサイクルプログラムができないか」 ミーティングで、そんな話し合いをしたのは2020年のことだ。
知られていないPTPシートは「資源」
サステナビリティ推進委員会のメンバーは原点に戻り、100種類以上の自社製品を卓上に並べ、環境に優しい取り組みを模索した。 「そもそもPTPシートが資源だという認識は、広まっているのかな」 薬の錠剤が入ったシートは、PTPシートと呼称される。PTPシートはプラスチックとアルミを圧着させたものだ。 品質を保つ目的と、コストのバランスから、ほとんどのシートはこの2種類の素材が用いられている。アルミとプラスチックを素材とするPTPシートは、資源に分類されているが、多くの人はそれを知らない。 実際にアンケートを実施すると、資源として分別していると回答した人は3割未満。6割以上の人はPTPシートが資源とは知らないという回答を得た。多くのシートが再資源化されず、ごみとして捨てられているのだ。 PTPシートの国内年間生産量はおよそ1万3000t、通常のシートでなんと約130億枚分もある。さらに高齢化に伴い、今後も使用量の増加が見込まれる。