『宙わたる教室』は“青春”の始め方を教えてくれる 窪田正孝と渡り合う小林虎之介の名演
藤竹(窪田正孝)が柳田(小林虎之介)のために“青空”を再現
自暴自棄になり、不良仲間の三浦(仲野温)から持ちかけられた麻薬の売買に手を出しかけた柳田は「ここは諦めたものを取り戻す場所ですよ」という藤竹の言葉に心を動かされ、教室に戻ってくる。藤竹はそんな柳田を含む生徒たちの前で、青空の再現実験を始めた。タバコの煙に、太陽に見立てたライトをタバコにかざすと、先から立ち上る煙が青みがかって見える。そこに、幼い頃から柳田が持ち続けていた「空はなぜ青いのか」という疑問の答えがあった。 時間を巻き戻して、みんなと同じように青空の下で青春を送ることはできない。けれど、何かに夢中になれる気持ちさえあれば、いくつになっても青春を送ることはできるし、暗闇の中でも青空を作ることはできるのだ。夜の教室で再現されたささやかな青空を見て、柳田の瞳が輝きを取り戻していく。『下剋上球児』(TBS系)や『ひだまりが聴こえる』(テレビ東京系)に次ぐ、小林虎之介の好演が光った。 大阪府のとある定時制高校の科学部が、科学研究の発表会「日本地球惑星科学連合大会・高校生の部」で優秀賞を受賞し、「はやぶさ2」の基礎実験にも参加したという実話が基になっている『宙わたる教室』。藤竹もこの定時制高校に科学部を作ろうとしているが、その目的はまだわからない。そんな中、理科室のガラス棚越しに青年の幻影が見え、思わず振り返る藤竹。EDクレジットでは金井悠と表示されており、『エール』で窪田の弟役を演じた佐久本宝が演じている。藤竹が研究者としてのレールを外れ、突然定時制高校の教師になったのは彼の存在が関係しているのだろうか。
苫とり子