「おまえと社会が悪いんだ」自殺をほのめかしてライブ配信中、元上司を名誉毀損 男性が見せた被害者への執着
大阪地裁は2024年8月、名誉毀損罪で起訴された30代の男性被告人に対して懲役8月(求刑懲役1年)の実刑判決を下した。驚くことに、被告人は2023年8月にも同じ被害者(以下、A)に対する名誉毀損罪で執行猶予付き懲役刑の有罪判決(以下、2023年事件)を受けたばかりだった。 今回問題となった名誉毀損行為はSNS上でのライブ配信中に行われた。その際、被告人は自殺をほのめかしており、視聴者からの通報が複数寄せられたことで事件が発覚した。 思い詰めた末の犯行だったようだが、一方でAは「どうしてここまで固執されるのか本当にわからない」と供述するなど困惑していた。(裁判ライター・普通)
●ライブ配信中に「Aが不倫している」
筆者は執行猶予判決となった2023年事件の公判も傍聴していたが、今回身柄を拘束されながら法廷に入る被告人を見て、非常に驚いた。肌は荒れ、虚ろにも感じる視線や表情などから、憔悴している様子が一目でわかるほどだった。 起訴状によると、被告人はスマートフォンを用いたSNSのライブ配信機能を用いて、「Aが不倫している」などと実名を挙げながら配信した。2023年事件では、同様の内容をチラシなどに記載し、Aの職場の駐輪場などに撒いた行為が有罪認定されていた。 なお、Aは不倫の事実を否定している。
●事件の経緯
検察官の冒頭陳述などによると、被告人とAは同じスイミングスクールに勤務しており、Aは被告人の上司だった。 学生時代に全国大会に出場するなど水泳に打ち込んでいた被告人は、スイミングスクールでもコーチとして成果を出すなど熱心に取り組んでいた。しかし、指導の考えでAと合わなかったことなどから退職。その後もハラスメントを疑わせるAの評判を聞くなどして、怒りの感情を抱くようになり2023年事件の犯行に及んだ。 2023年事件の判決後、被告人は別の職場に就職し、Aへの思いは落ち着いた。しかし、元同僚や教え子の保護者から話を聞く機会があり、また怒りの感情を抱くようになってしまった。 自ら張り込みをするなどAの様子を見ているうちに、自身が反省していることが馬鹿らしく感じるように。失意から自殺を考えるようになる中、(被告人が考えるAの)悪事を明らかにしようと考え、今回の行為に至った。 ライブ配信の告知をすると、元同僚は過去の件から「嫌な予感がした」と周囲の人間とともに警戒。被告人はそれを察したのか、一度は配信予定を止めたものの、その数日後実行に移した。 配信では「これホースです。外から(一酸化炭素を)車内に入れてて、中は密閉しています」などと自殺をほのめかす会話を始めたことから視聴者が通報。100人近くが視聴できた状態だったといい、複数件の通報が寄せられたという。