中村萬壽・中村時蔵『妹背山婦女庭訓』目のくらむような御殿に迷い込んだ田舎娘・お三輪【今月の歌舞伎座、あの人に直撃!! 特集より】
毎月歌舞伎座公演で上演される演目のなかから、気になる場面やせりふ、キャラクター、衣装などをピックアップ。客席からは知る事のできないあれこれを、実際に演じる役者に直撃質問! これを読めばきっと生の舞台を体感したくなるはず。 さぁ、めくるめく歌舞伎の世界へようこそ。(「ぴあ」アプリ&WEB「ゆけ!ゆけ!歌舞伎“深ボリ”隊!!」今月の歌舞伎座、あの人に直撃!! 特集より転載) 【全ての写真】中村萬壽さん・時蔵さんインタビューカット、最新舞台写真ほか 強力な恋敵がいるにもかかわらず、恋しい男を追いかけて追いかけて、たどり着いたところは生まれてこのかた見たことのない広大な御殿。そこに現れた官女たちに散々にいじめられ邪険にされ、それでも逢いたい求女さま。ひとりのけなげな田舎娘の恋心が、国の形を変えてしまう政変へとつながっていく。そんな運命を背負っているのが『妹背山婦女庭訓』に登場する杉酒屋の娘お三輪だ。 <あらすじ> 謀略をめぐらし権勢を誇る蘇我入鹿の三笠山御殿へ、入鹿の妹・橘姫が戻ってくる。その振袖に赤い糸をつけて後を追ってやってきたのが恋人の求女。そしてその求女を追いかけて杉酒屋の娘お三輪がやってくる。求女の裾に付けた苧環の白い糸が切れて途方に暮れているところへ、豆腐買のおむらが現れ……。 このお三輪をこれまで何度も勤めてきたのが、中村時蔵改め初代中村萬壽さん。そして「六月大歌舞伎」の昼の部で上演される『妹背山婦女庭訓』でお三輪を初役で勤めるのが、中村梅枝改め六代目中村時蔵さんだ。 なぜこのお三輪が女方の大役と言われるのか。なぜ赤姫※でも片外し※でもなく、田舎娘のお三輪でなければならなかったのか。今月の深ボリ隊はこのお三輪をロックオン。初日を目前に控え、萬壽さんには役の性根や表現について、時蔵さんには、そんなお三輪を襲名披露のお役として初役で勤めることへの思いを語っていただいた。 ※赤姫:歌舞伎に登場するお姫様役の総称。大名や貴族など身分の高い家柄の娘が赤い色の衣裳をつけることに由来。 ※片外し:本来は鬘の名称だが、この鬘を用いる位の高い武士の女房や武家に仕える女性役の総称。