2023年度の「物価高」倒産 前年度比 1.7倍の 684件 製造業、運輸業、建設業など、内需産業と下請けで増加
2023年度 の「物価高」倒産状況
2023年度(4-3月)の「物価高」を起因とする倒産は684件(前年度比73.6%増)で、前年度(394件)の1.7倍と大幅に増加した。負債総額は3,976億8,600万円(同90.9%増)だった。 外国為替相場(月末17時時点)は、2022年4月が1ドル=130円60銭だったが、2024年3月には151円34銭と、2年間で20円74銭下落した。円安で推移するなかで、原材料や資材、エネルギーなど、幅広い価格で上昇が続いている。コロナ禍からの業績回復が遅れているうえ、価格転嫁も進まない企業は物価高が資金繰りへの負担に拍車を掛けている。 産業別では、最多が製造業(前年度比67.8%増)と運輸業(同64.0%増)の各146件。次いで、建設業の138件(同109.0%増)と続く。輸出産業は円安の恩恵を受けて好業績をあげている一方、内需型産業や下請企業は原材料や燃料などの価格上昇分を価格転嫁できず、収益力の低下とともに体力を消耗し息切れを起こしている構図が浮き彫りとなった。 負債額別は、負債1億円以上が398件(同63.7%増)で、約6割(構成比58.1%)を占めた。 形態別は、破産が603件(前年度比73.2%増)で、約9割(構成比88.1%)に達した。 3月19日、日本銀行がマイナス金利政策解除を決定し、長く続いた低金利時代が終焉を迎えて、金利のある世界への転換期に入った。これにより日米の金利差の縮小から外国為替レートは円安から円高に進むとみられたが、2024年3月は再び1ドル=150円台で推移している。さらに、大手企業は大幅な賃上げが相次ぎ、中小企業も賃上げを迫られている。しかし、物価高と人件費上昇分の価格転嫁は容易ではなく、中小・零細企業の資金繰り悪化に拍車を掛けることが懸念される。 政府は、中小企業や下請け企業の価格転嫁を支援する施策と実行が問われている。 ※本調査は、2023年度(2023年4月-2024年3月)の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、①仕入コストや資源・原材料の上昇、②価格上昇分を価格転嫁できなかった、等により倒産(私的・法的)した企業を集計、分析した。