九州各地の自治体が相次いで工業団地の整備に乗り出している。半導体の受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造（TSMC）が熊本県に進出したことをきっかけに、半導体関連企業の進出意欲が高まっているからだ。各自治体は受け皿となって地域経済の活性化につなげたい考えで、誘致競争が激化しそうだ。（姫野陽平） 【図】九州で整備が計画されている主な工業団地

誘致に自信

工業団地の整備に向け覚書を締結した熊本県の木村知事（右）と八代市の中村市長（11日、熊本市で）

　「かつては工業団地を作っても埋まらないことがあったが、今は半導体を中心に景況感がいい」

　熊本県八代市への工業団地の整備に向け、11日に同市と合意した木村敬知事は県庁での記者会見で企業の誘致に自信を示した。県がこれまで整備した8か所の団地はほぼ埋まっており、八代市では九州自動車道八代インターチェンジ（IC）の北約2キロ・メートルに約35億円をかけて25ヘクタールを整備する。2028年度の完成予定だ。

　近くには九州新幹線の新八代駅や国際港湾の八代港があり、交通の利便性は高い。木村知事と覚書を結び、記者会見に同席した八代市の中村博生市長は「可能性があるなら、TSMCの新たな工場の誘致も目指したい」と意気込んだ。

　県は菊池市でも25ヘクタール規模の団地の整備を26年度までに進める。TSMC熊本工場が立地する菊陽町も独自に工場近くで用地の確保を検討している。

熊本県外でも

　九州経済調査協会は、TSMCの熊本進出に伴う九州・山口・沖縄の経済波及効果を21～30年の10年間で累計20兆円と見込む。九州は「シリコンアイランド」と呼ばれ、半導体関連企業約1000社が集積しているが、今後、さらに増加する見通しだ。

　実際、福岡県は、TSMCの熊本進出以降、半導体関連企業から進出に関する問い合わせが増えた。県はうきは市の西部で新たな工業団地の整備を計画するほか、直方市と鞍手町にまたがる地域でも造成を進めている。飯塚市は今年6月、閉山した炭鉱の跡地約25ヘクタールを取得し、28年度の完成を目指す。

　早期の整備に向け、民間企業のノウハウを取り込む自治体もある。佐賀県と同県鳥栖市は、九州自動車道・鳥栖ジャンクションの南側での計画実現に向け、今年6月、東急不動産を代表とする企業グループと組むことを発表した。長崎県と同県東彼杵町も同町内の団地を開発する民間事業者の募集を始めた。

課題も

　TSMC熊本工場の一帯では、既に企業の集積が進み始めているが、渋滞などの問題も顕在化している。今後、誘致競争の激化が見込まれる中、いかに進出企業にとって利便性の高い環境を提供できるかがカギを握りそうだ。