超音速実証機XB-1、4回目の飛行試験でマッハ0.6到達 JAL出資の米ブーム
超音速旅客機「オーバーチュア(Overture)」を開発中の米ブーム・スーパーソニック(Boom Supersonic、本社デンバー)は現地時間9月21日、4回目となる超音速飛行の技術実証機「XB-1」(登録記号N990XB)の飛行試験に成功した。前回から8日後の実施で、年末までに超音速飛行の達成を目指す。日本航空(JAL/JL、9201)も出資しており、実際に量産するオーバーチュアは、ユナイテッド航空(UAL/UA)などが発注している。 【写真】マッハ0.617に達した超音速実証機XB-1 ◆超音速まで10回飛行 4回目の飛行試験は、これまでと同じカリフォルニア州のモハベ(モハーヴェ)空港・宇宙港で21日に行われ、チーフテストパイロットのトリスタン“ジェペット”ブランデンブルグ氏が操縦桿を握った。最高高度は1万6150フィート(約4923メートル)、速度はマッハ0.617(約756キロ)に達し、総飛行時間は約48分だった。 今回は最高速度を更新したほか、FES(フラッター励振システム)を飛行中に初めて使用し、225-300ノットでの操縦性の品質チェック、2.78Gまで加速し「ウィンドアップターン」と呼ばれる飛行試験技術で高いGをかけた。また、着陸装置は225ノットで格納された。 超音速に達するまでに約10回の亜音速飛行を予定しており、まもなく半分に達する。今後の飛行試験では、着陸装置を離陸直後に格納するなど、実際のフライトの状態に近づけていく。 ◆オーバーチュアはアフターバーナーなしで超音速 実証機のXB-1は2人乗りで、主翼の形状はデルタ翼を採用し、エンジンは既存のGE製J85-15が3基。アフターバーナーを使ってマッハ2.2(時速換算2335キロ)の実現を目指す。ブームは、XB-1で超音速飛行の技術を検証し、同社初の超音速旅客機であるオーバーチュアの開発につなげる。 オーバーチュアはエンジンが4基となり、アフターバーナーを使わずに現在の民間航空機の2倍となる速度を実現し、マイアミからロンドンまで5時間弱、ロサンゼルスからホノルルまで3時間で結ぶ。 巡航速度は洋上で超音速のマッハ1.7、陸上で亜音速のマッハ0.94、ペイロード航続距離は4250海里(7871キロ)を計画。乗客定員は65から80人で全席ビジネスクラスになる。外寸は全長201フィート(約61メートル)、翼幅106フィート(約32メートル)、全高:36フィート(約11メートル)、内寸は全長79フィート(約24メートル)、通路の最大高さ6.5フィート(約2メートル)、2つのLRU(列線交換ユニット)、4系統のデジタルフライバイワイヤ、エンジンは100%SAF(持続可能な航空燃料)対応、騒音レベルはICAO(国際民間航空機関)のチャプター14、FAA(米国連邦航空局)のステージ5としている。 英仏が共同開発した「コンコルド」は2003年11月26日のフライトを最後に退役しており、オーバーチュアが計画通り2029年に就航すると、四半世紀ぶりの超音速機による旅客便の復活となる。 最初の確定発注は、ユナイテッド航空(UAL/UA)から2021年6月3日に15機を獲得し、アメリカン航空(AAL/AA)も最大20機の発注で、追加40機分のオプション付きの契約を結んでいる。JALは2017年12月にブームと提携して1000万ドル(当時の円換算で約11億2500万円)を出資し、将来の優先発注権を20機分確保している。
Tadayuki YOSHIKAWA