バリー・コーガンやジョー・アルウィンらを勝手に表彰!第77回カンヌ映画祭を盛り上げた、ハイレベルなメンズルックを総まとめ
第77回カンヌ映画祭が5月14~25日、フランスにて開催された。『バービー』(23)で記録を打ち立てたアメリカの映画監督、グレタ・ガーウィグが審査委員長を務め、ショーン・ベイカー監督のアメリカ映画『Anora』が最高賞パルム・ドールを受賞して、アメリカ勢が輝いた年となった。日本からは、『ぼくのお日さま』(9月公開)、デジタル修復版『七人の侍』(54)、『ナミビアの砂漠』(2024年公開)、『化け猫あんずちゃん』(7月19日公開)、『とても短い』(2024年公開)が出品され、山中瑤子監督作『ナミビアの砂漠』が国際映画批評家連盟賞を受賞した。是枝裕和監督がコンペティション部門で審査員を務め、名誉パルム・ドールにスタジオジブリが団体としては初となる受賞を果たし、日本勢にとっても晴れ晴れしい祭典となった。そんな77回目のカンヌ映画祭を、クールなファッションで彩った俳優たちをご紹介する。 【写真を見る】5人の子どもたちに囲まれカンヌ入りしたケヴィン・コスナー。15歳のヘインズ君に熱視線? ■「ベスト・レジェンダリー」賞:ケヴィン・コスナー 一時低迷していたキャリアを、パラマウントネットワークの米西部劇ドラマ「イエローストーン」への出演で盛り返しているとは聞いていたが、久々のレッドカーペット、しかもカンヌに登場したケヴィン・コスナーのかっこよさと言ったら!来年古希を祝うコスナーは、7人いるという子どものうち、5人を連れてカンヌ入り。自身の最新作『Horizon: An American Saga-Chapter 1』のレッドカーペットでは、パーフェクトなブラックタイのタキシードルックで登場。息子にこういう夜の装いを教えられるのも親父としてすてきだし、自身はベストを着て、年齢層によるブラックタイの着こなしの違いを見せたのもクール。同作のフォトコールとフランスの文化省から芸術文化勲章を受章した日に着用したオールホワイトのセットアップも、白髪交じりの口髭と南仏に合っていてセクシー。世間は15歳に成長したヘイズ君のかっこよさをフィーチャーしていたけど、ファッションもキャリアも、いまがケヴィンのセカンド(?)全盛期と言えるほど輝いている! ■「審査員」賞:是枝裕和 今年のコンペティション部門で審査員の1人を務めた是枝裕和監督は、オープニングセレモニーに、とてもおしゃれなルックで現れた。ドレスコードがブラックタイの時に身に着けることがメンズファッション界で昨今トレンドとなっているブローチ(ホワイトゴールドにダイヤモンドが付いたショーメのウィエコレクションだそう)もさることながら、ボウタイをバーガンディ(つまりブルゴーニュワインレッド)にしたのが技ありでステキ!タキシードはプラダで、登壇を華やかに飾った。 ■「審査員」特別賞:オマール・シー 『ジュラシック・ワールド』(15)などに出演するオマール・シーも、審査員を務めた1人。『Emilia Perez』レッドカーペットでの、タキシードがオーバーコートになったようなアミパリスも、『Megalopolis』プレミアでの、ジャケットとボトムで柄を不揃いにしたバーバリーもよかったけれど、一番スタイリッシュだったのは、オープニングセレモニーでのルイ・ヴィトンのルック。ホワイトのタキシードには、ボウタイでなくてネクタイを合わせ、ドレスダウン。ドレスアップより断然テクニックがいるけれど、ホワイトを選んだことで華やかに魅せることに成功した。 ■「ベスト・カラーパレット」賞:バリー・コーガン 主演を務める『Bird』ワールドプレミアのレッドカーペットに登場したバリー・コーガンは、美しいブルーのバーバリーをチョイス。メットガラでも選んだ胸元が特徴的なシャツは、カンヌでのプラストロン(フランス語でフロントを意味するフリルやビブなどが付いたシャツ)のほうがロマンティックで洗練されていてすてき。グレーがかったジャケットのブルーも、彼の瞳の色に合っている。ウォッチのベルトをレッドカーペットに合わせてレッドにしたところが粋だし、彼は本当に、自分に似合うものを熟知している。 ■「ベスト・ファッショナブル」賞:ヴァンサン・カッセル 昨年別れた元妻と付き合い始めだった当時から、ヨーロッパのファッションショーに顔を出すようになったヴァンサン・カッセルは、新しいブラジル人モデルの彼女とカンヌ入り。『Parthenope』のレッドカーペットでは、夜に合うネイビーのプラダで。自身の主演作『The Shrouds』のレッドカーペットでは、昼に合う淡いパープルのイヴ・サンローランで。アンソニー・ヴァカレロによるサンローランのスーツには、シャツと同化させたネクタイや大きなブローチを合わせて、彼の個性を色鮮やかに演出した。 ■「ベスト・オリジナリティ」賞:ルーカス・ドン カンヌ受賞歴のあるベルギーの映画監督ルーカス・ドンも、シャツと同化させたネクタイを選んで、オリジナリティのある着こなしを成功させた1人。『The Most Precious of Cargoes』のプレミアでは、シングルのボッテガ・ヴェネタに、ミントグリーンを合わせた。この色合いに個性があるから、ジャケットはシンプルなシングルでよいのだ。『The Count of Monte Cristo』レッドカーペットでの、濃い赤紫色のディオール・オムも、とてもスタイリッシュ。ボトムのシェイプ選び、サイジングとフィットもパーフェクト! ■「ベスト・ドレッサー」賞:ジョー・アルウィン ストリートや空港でのデイリーウェアもパパラッチされ、今回のカンヌに参加したセレブのなかで一番おしゃれだったかも、と世界中のメディアで報じられていたジョー・アルウィン。パパラッチ写真に写り込むイントレチャートをみるかぎり、プライベートではボッテガ・ヴェネタの愛用者なのね!自身が出演する『憐みの3章』(9月27日)のプレミアレッドカーペットでも、クールなセリーヌのルックを披露。ジャケットのラペルの幅を考慮して、ネクタイをスキニーにしたのがよい。そちらでシャープなラインを印象づける一方、ピアジェのウォッチは丸みを帯びたデザインを選んだセンスがお見事! ■「ベスト・カムバック」賞:ジェームズ・フランコ ブラックのタキシード、ホワイトのシャツにビックバタフライのボウタイ、エナメルのレースアップシューズ、チーフの代わりにコサージュにしたぐらいで、通常であれば定番すぎるぐらいの王道タックスコーディネート。でも、カンヌで求められるファッションの正解のようなルックが、今回のジェームズ・フランコにとってはいいのだ。2018年の、自身が開催する映画学校の女子生徒との性的不適切疑惑のスキャンダル以来、初の公式の場だから。しかも現在のフランスは、MeToo運動が活発化しており、ちゃんと解決されていなければカンヌに出席することはできないし、セカンドチャンスは誰にでも与えられるべきだろうが、それを生かせるかどうかは本人次第。反省すべきとか無難にすべきという意味ではなく、こういう場のファッションというのは、誰のために、なんのために、というプロフェッショナリズムとエンタテインメント性が要求されるというもの。この装いのように、このままキャリアの再出発も華麗に決めてほしい。 ■「ベスト・ビッグ」賞:エヴァン・ロス ダイアナ・ロスの息子で、アシュリー・シンプソンの夫である俳優のエヴァン・ロスは、ビックでゴージャスなタキシードで登場。『Parthenope』のレッドカーペットに選んだのは、アンソニー・ヴァカレロによるイヴ・サンローラン。本人のインスタグラムによると、合わせていたのはブーツだったよう。このブーツのラインがカッコいいから、もっとみせてほしかったけど、ルースな袖やドラマティックなインナーを美しいドレープとして魅せ、扱いづらいアイテムを着こなしていたのはすばらしい! ■「ベスト・バランス」賞:ルシアン・ラヴィスカウント Netflix「エミリー、パリへ行く」で一躍知名度を上げた、イギリス人俳優ルシアン・ラヴィスカウントは、選んだドルチェ&ガッバーナのジャケットのフィットが完璧。ウエストが絞られているシェイプが、よりマスキュリンな魅力を際立たせている。『Marcello Mio』のレッドカーペットのお供に選んだウォッチは、IWCの最も歴史あるコレクションの1つ、ポルトギーゼのパーペチュアル・カレンダー42というもの。ジュエリーのクラシックさとタックスのモダンさのバランスが、コンテンポラリーでスタイリッシュ! 文/八木橋 恵