【放送40周年】山下真司×宮田恭男 ”師弟コンビ”が復活!『スクール☆ウォーズ』のすべてを語ろう
FRIDAY創刊40周年スペシャル対談企画 日本全国でラグビー部を激増させた伝説のドラマ
校舎をバイクが駆け抜け、教師が生徒に襲われる――非行や校内暴力が社会問題化していた’84年に放送された『スクール☆ウォーズ』(TBS系)は、山下真司(72)演じる熱血教師・滝沢賢治が荒廃した学校を救い、弱小ラグビー部を全国大会優勝に導くまでの軌跡を描いた、実話に基づくドラマだ。 山下真司×宮田恭男 学校でラグビーボールを手にして…スペシャルショット!【写真】 最高視聴率は20%超。そのダイナミックすぎる物語が一大ブームを巻き起こし、日本全国でラグビー部を激増させた。ザブングル加藤(50)の最大のギャグのひとつ、『悔しいです‼』はメインキャストの一人、森田光男の名ゼリフが元ネタである。 奇しくも同じ’84年に産声を上げたFRIDAYの創刊40周年に際し、件(くだん)の森田光男役を演じた宮田恭男(60)と山下の″師弟コンビ″に往時をたっぷり語り合ってもらった。 山下:元気そうだな。俺抜きで松村雄基(61・大木大助役)らと『スクール☆ウォーズ』の昔話をして、YouTubeで300万回も再生されたって? 俺のチャンネルなんか100万回も行かないのに。 宮田:僕がやっている寿司屋に来るお客さんとの間でもしょっちゅう、『スクール☆ウォーズ』の話題が出ますよ。 山下:やっぱり裏話が聞きたいんだよ。実は俺がスーツの下にパッチを穿いてた、とかさ。イメージを壊されたよ(笑)。 宮田:セリフとかナレーションとか、やってた僕らよりお客さんのほうが詳しい。 山下:俺たちは毎日毎日、「どう撮影を乗り切るか」で必死。オンエアを観る余裕なんてなかったからな。だから、雄基にツッコまれるまで″森田光男は和田アキ子さん(74・下田夕子役)の息子″だと勘違いしてたよ。弟なんだってな。 宮田:当時、僕はハタチで和田さんの夫・下田大三郎役の梅宮辰夫さんが45でしたから、親子と勘違いしますよね(笑)。 山下:当時、俺は32だったかな。そう言えば、出演オファーが来たとき、滝沢賢治のモデルとなった山口良治先生(伏見工業高校ラグビー部元監督)と同じ「角刈りにしろ」って言われたんだよ。前髪だけはなんとか残させてもらった(笑)。 宮田:ラグビーシーンも本格的で、相当練習しましたね。最初はパスをするのも難しかったですが、できるようになると面白くなってきた。出演者みんなで毎日、部活みたいに練習しましたよね。 山下:クランクインが2月で真冬に春のシーンを撮っていたから、とにかく寒かった。生徒役のみんなは走っているから身体があたたまるけど、監督の俺は指示を出すだけで動けないから。 宮田:だから、カシミヤのいいパッチを着用していたんですね(笑)。少年院あがりの番長、水原亮役を熱演した小沢仁志さん(62)との河原での決闘シーンも極寒の中の撮影でした。 山下:実はあのシーンのことを小沢はいまだに根に持っている。最後、俺が水原(小沢)の頭を川に沈めるんだけど、アイツが俺の足をパンパンパンと3回叩いたら、水から引き上げる約束になっていた。それを、演技に入り込み過ぎて、すっかり忘れちゃって(笑)。まあ、そのくらい真剣だったってこと。その後、滝沢は水原にブランデーを飲ませるんだけど……これも今なら大問題だね。 ◆イソップのNGに付き合った 山下:生徒役は寄せ集めって言ったら失礼だけど、俳優経験のない新人が多かった。イソップ(病弱ながらラグビーを愛し抜いた奥寺浩役の高野浩和・57)なんてまったくのド素人。NGばっかり出して、現場は大変だったよな。ただ、人気は凄かった。俺までが、街ですれ違った子供たちに「イソップ~!」って声をかけられていたからね。 宮田:撮影が始まった時、イソップは16歳くらい。だから、他の俳優さんと比べたら手がかかったと思うんです。でも、山下さんを始め、先輩方はいくらNGを出しても何も言わず付き合ってくれた。 山下:ドラマのなかで「One for all, All for one(一人はみんなのために、みんなは一人のために)」という言葉が出てきたけど、現場はまさにそんな感じだった。 宮田:普通の現場なら、自分の出番がないときは焚き火で暖をとりながら休憩したりするんでしょうけど、そんな人はいなかった。一緒にラグビーの練習をしたり、仲間がセリフを覚えるのを手伝ったり。山下さんも「気持ちが入らないと泣けないだろう」と、自分は映らないのにカメラの横でボロボロと涙を流してくれた。ただ――相模一高に109対0で惨敗した後のロッカールームのシーン。山下さんが撮影開始当時から「大事だぞ」と言ってくれていたあの場面だけは、僕らと山下さんとの間に″温度差″があった。 山下:「お前ら悔しくないのか?」「ゼロの人間か?」と問われた森田が涙ながらに「悔しいです!!」と答え、その後、俺がラグビー部員全員を殴るという、『スクール☆ウォーズ』屈指の名シーンなのに、途中で「昼飯に行く」って休憩に入っちゃった。飯食ったら悔しいものも悔しくなくなっちゃう。大切なシーンなんだから、撮り終えて安心してから食べりゃいいのに「わかってますよ」「大丈夫ですよ」なんて言って行っちゃった。 宮田:だって、お腹が減ってたから。 山下:こっちはテンションを上げていたから「いい芝居しなかったらぶっ飛ばしてやる」と思ってたんだけど、実にいい感じでね。俺が一番悔しかった(笑)。 宮田:『スクール☆ウォーズ』は今では珍しい2クール放送(半年)で、山下さんも相当疲れたんじゃないですか。 山下:直後に2時間ドラマの刑事役の話が来たんだけど、犯人を追いかけるシーンで大ケガして降板になった。身も心も疲弊していたんだなと実感したよ。この作品に人生を懸けていたからね。普段は現場を離れたら山下真司に戻るものなんだけど、イメージを壊したくなくて休みの日もジャケットを着ていたからね。クラブに行っても馬鹿できないから……結局、行かなくなっちゃった(笑)。 宮田:滝沢賢治の名は汚せない! 山下 実は『スクール☆ウォーズ』の後、TBSから高校教師役でドラマの出演オファーが来た。主演だったけど、女子高生と恋する役だというから断った。滝沢賢治のイメージが崩れるからね。結局、真田広之くん(64)がやったんだけど……。 ――滝沢賢治の『高校教師』、観たかった気もするが……二人は対談をこう締めた。 宮田:「親父に勧められてハマった」という若い子が店に来てくれたんです。「この作品に勇気を貰って、白血病を克服することができた。だから、周りに宣伝しているんだ」って。感激しました。 山下:「ラグビーは少年をいち早く大人にし、大人にいつまでも少年の心を抱かせる」って言葉があるけど、純粋さとか優しさ、信じる心という、生きていくうえで大切なことをこのドラマは教えてくれたんじゃないかな。だからこそ、放送から40年経った今も青春のバイブルとして語り継がれているんだと思う。 『FRIDAY』2024年11月22・29日合併号より 取材・文:栗原正夫
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