俳優・山中崇史、生意気だった鼻をへし折られた初舞台。稽古では演出家から強烈なダメ出し「違う!違う!違う!」
2003年からドラマ『相棒』(テレビ朝日系)に出演し、芹沢刑事役として広く知られている山中崇史さん。 【写真を見る】主演舞台の公演を控える山中崇史さん 『時代劇スペシャル 無用庵隠居修行』シリーズ(BS朝日)、『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)、映画『TAP THE LAST SHOW』(水谷豊監督)、映画『太陽とボレロ』(水谷豊監督)などに出演。劇団扉座の看板俳優としても活躍。 2024年6月6日(木)から16日(日)まで座・高円寺1で劇団扉座第77回公演『ハロウィンの夜に咲いた桜の樹の下で』(作・演出・横内謙介)に主演する山中崇史さんにインタビュー。
学芸会の拍手が気持ち良くて
埼玉県で生まれた山中さんは、小さい頃から目立ちたがり屋で明るい子どもだったという。 「僕は長男坊で年子の弟と妹がいて、家の中はとても賑やかで、兄弟仲良くて、家族も仲良くて。お兄ちゃんなので、弟と妹よりも目立ちたいって、家の中でもそんなふうに思っていたし、学校でも目立ちたいみたいなことを思っている子でしたね。 僕が小学校2年生ぐらいのときに鉄棒のグライダー(飛行機飛び)というのがあって、それがみんなはできなかったけど、僕はできたんです。それで、僕がそれをやったら、みんなに『ヒューッ、ヒューッ』って言われて(笑)。そういう人気者とかになるのが気持ち良かったりしていましたね」 ――ひとりだけできたら、クラスではスターですよね。 「そう。そういう感じだったので、気持ちがいいなと思って。僕は小学校3年生のときに茨城に引っ越したのですが、すぐに学芸会があって、お芝居をやることになったんです。僕はいい役をやりたかったんだけれど、何せ引っ越してすぐだったので、あまりみんなも僕のことを知らない状態で配役をされてしまって。 僕は目が悪くて黒縁の眼鏡をかけていたからワンシーンだけ出てくるお医者さんの役になって、短いセリフが一言だけなんですよ。自分的にはあまりうれしくはなかったんだけど、当日体育館でそのお芝居をみんなでやって。 僕は釣り針が引っかかってしまった鯛の喉から釣り針を取ってあげるお医者さん。『その釣り針を取ってください、お医者さん』って言われて、舞台の袖から黒縁の眼鏡をかけて長い白衣を着た僕が、後ろに黒い大きな革のバックを持たせた看護婦さんをひとり連れて、2人でズルズル、ズルズル出てきたらお客さんがすごくザワザワしはじめて。 僕もそのザワザワが新鮮で『何だろう?どうしたんだ?』みたいな感じで(笑)。鯛の喉から釣り針を取って、そこで客席に向かって一言、『おーっ、あった、あった』って言ったら大爆笑で、ものすごい拍手を受けた記憶があるんですよ。 それでもう完全に気持ち良くなってしまって(笑)。これいつも思うんですけれど、振り返るとそれが『役者さんをやりたいな』と思ったきっかけだったかもしれないなって」 ――一言しかセリフを言ってないのにすごいですね。 「ウケてやろうと思ってないのにね。よっぽど可愛かったんだと思うんですよ、僕(笑)。ちっちゃかったし、長い白衣を着て黒縁の眼鏡で。本当に気持ち良かったです」 ――小学校3年生で、拍手をもらう快感を覚えてしまったわけですね。 「そう。何か人前でやって拍手されたりするのは気持ちいいって思いました。それは今、舞台上で芝居をして拍手をいただいても同じ感覚。今でもそれと一緒ですもん。気持ちいいなあって。癖になりますよね(笑)」