嫌われ者の教師、反抗的な生徒、1人息子を亡くした料理長…3人だけで過ごす2週間の“居残り”休暇 「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」を採点!
〈あらすじ〉
1970年冬、ボストン近郊にある全寮制の名門バートン校。生徒も教職員たちも家族のもとに帰るクリスマス休暇が始まろうとしていた。ところが、偏屈で嫌われ者の古代史教師のハナム(ポール・ジアマッティ)は、校長から、誰もが嫌がる居残り役――帰省せずに学校に留まる生徒の子守を命じられてしまう。学校に残ったのは、勉強はできるが、家庭環境が複雑で反抗的な生徒アンガス(ドミニク・セッサ)。そして、ベトナム戦争で1人息子を亡くしたばかりの料理長メアリー(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)だ。 かくして“居残り者たち(ホールドオーバーズ)”の2週間の休暇が始まる。
〈解説〉
『サイドウェイ』のアレクサンダー・ペイン監督と名優ジアマッティの20年ぶりのタッグ作。孤独な3人の絆を描くヒューマンドラマ。第96回アカデミー賞助演女優賞受賞作。133分。 中野翠(コラムニスト)★★★☆☆全寮制の名門校。暮らしのディテールが興味を引く。教師役P・ジアマッティに不満はないが問題の生徒役、老け顔では? 芝山幹郎(翻訳家)★★★★☆登場人物の欠陥と愛おしさをともに炙り出すビタースイートな味は、この監督ならでは。ハル・アシュビーの匂いもする。 斎藤綾子(作家)★★★★☆脆弱な己を守るために他者を威嚇する、孤独な三人のいたたまれない休暇のはずが、不思議な優しさに包まれて面白い。 森直人(映画評論家)★★★★☆作風はほぼハル・アシュビー。特に『さらば冬のかもめ』の色強し。弱火でじっくり心を溶かす語り口が佳麗。後味が◎。 洞口依子(女優)★★★★☆ポール・ジアマッティ扮するあの先生とあの生徒と学校に残った食堂の女性、様々に描かれた人の姿。古きから今を知れ! INFORMATIONアイコンホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ(米) 6月21日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開 https://www.holdovers.jp/
「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年6月27日号
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