最も恐ろしい実録マフィア映画は? 史上最高の犯罪映画(1)中毒状態で痛みを感じない…伝説のバイオレンス
マフィアというものを狭義に解釈をした場合はイタリアのシチリア島を期限とする犯罪集団のことを指す。元々は地域と民族・国籍によって限定されていた犯罪集団を指していたが、近年ではもっと広義の意味を持つようになっていわゆる犯罪集団全般を指し示す言葉になった。今回は実話を基にしたマフィア映画を5本セレクト。魅力を紹介する。第1回。(文・村松健太郎)
『スカーフェイス』(1983年)
監督:ブライアン・デ・パルマ 脚本:オリバー・ストーン 出演者:アル・パチーノ、スティーヴン・バウアー、ミシェル・ファイファー、メアリー・エリザベス・マストラントニオ 【作品内容】 もともとは1932年のギャング映画『暗黒街の顔役』(原題スカーフェイス)を基にしたリメイク作品。“スカーフェイス”というのは1930年代の禁酒法時代に暗黒街の帝王として君臨した実在の大物マフィアの一人のアル・カポネの通称。映画内でアル・カポネであるということは明言されていないが、このタイトルを見た当時の人々は誰のことを指しているかほぼ間違いなく分かっていた。 こういった出自を持つ『暗黒街の顔役』を当時の社会情勢を大胆に取り込んで、再映画化したのがこの1983年版の『スカーフェイス』。監督はブライン・デ・パルマ、脚本をオリバー・ストーンが担当した。 【注目ポイント】 『ファントム・オブ・パラダイス』や『キャリー』で一躍注目の若手となっていたブライン・デ・パルマは本作をもってサスペンスの巨匠としての地位を確立した。すでに『ミッドナイト・エクスプレス』でアカデミー賞を受賞していたオリバー・ストーンもこの映画で地位を確立、のちに大物監督になっていく。 キューバからの難民としてゼロから麻薬王にのし上がっていくトニー・モンタナを『ゴッドファーザー』のアル・パチーノが怪演。“Fワード”連発する怪物を嬉々として演じている。 本作が大きく注目を浴びたのはそのバイオレンスシーン。ホラー映画を連発していたブライン・デ・パルマ監督らしく暴力描写には一切の遠慮がない。伝説となっているチェーンソーによる拷問シーンは完全にスプラッターホラー映画の様相を呈している。 銃撃シーンもきわめてリアル。『ゴッドファーザー』の銃撃シーンが体現する“様式美”とは完全に無縁のものとなっている。クライマックスの銃撃シーンは主人公が薬物中毒のために痛みに強くなっているということもあって、撃たれ続けても立ち上がる怪物として表現されている。 基になった映画『暗黒街の顔役』とは全く別物になったものの、80年代の犯罪を鮮烈に切り取った忘れがたい作品となった。 (文・村松健太郎)
村松健太郎