愛知・豊田に新家具ブランド 林業衰退の歯止め狙い
愛知県内最大の森林面積を抱える豊田市でこのほど、家具ブランド「hitotoki(ヒトトキ)」が立ち上がった。同市内で活動する製材業者やデザイナー、木工職人などの有志が、材料となるスギやヒノキの原木伐採から加工、製材、商品デザイン、販売までをすべて手がける。同市は良質な木材が豊富にあるが、後継者不足などにより林業が衰退している現状がある。ブランドでは「すべて豊田で手がけた家具を地元の人たちに知ってもらい、地元の林業に興味を持つ若い世代を増やしたい」と意気込む。
スツール自体の強度を増す狙いも
ブランドは、互いに顔が見える関係で、豊田産木材を流通させるために活動する任意団体、「人と木をつなげるプロジェクト」が設立し運営。現在30歳代を中心に7人が活動する。 ブランドとして初めて作り上げた商品は、さわり心地や色つやがいい豊田産のスギ材を使い、三角柱の形をしたスツール。単体、または複数を組み合わせて、椅子やサイドテーブルとして利用できる。一辺の長さを37センチに統一し、コンパクトで手軽に扱えるようにした。2016年春に量産化して販売開始予定。 現在数種類のタイプを製作。木のみで作ったタイプのほか、トヨタ自動車の下請け金属部品メーカーが作ったステンレス製の金属フレームを、木材の継ぎ目に組み入れたタイプもある。車の街というアピールや、スツール自体の強度を増す狙いがある。
林業家の収益が一番低い状態で厳しい
価格は、林業を支えるというブランド理念から、原木がある山を管理する林業家らと相談して決める。プロジェクトの代表で、製材業者の樋口真明さん(39)は「製品ができるまでの経済活動を見た場合、材料の仕入れ部分、いわゆる林業家の収益が一番低い状態で厳しい」と指摘し、原木を生み出す林業家にも、収益を還元させる必要性を説く。 樋口さんによると豊田産の木材は、原木がある土地の気候や地形など、いい品質になる条件が、ある程度整っているという。実際に、耐久性などが求められる神社仏閣に使われるほど、業界からは一目置かれている。 一方、原木から角材や板材を作る製材業は、職人の高齢化や担い手不足により減少。一時、豊田市内に20社以上製材業者があったが、現在、純粋に製材のみを手がける業者は1社のみ。他社は、製材とともに住宅建築など、業務の幅を拡大して事業を成り立たせているという。
林業が栄えるような仕組みを確立したい
11月、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれた家具見本市「IFFT インテリアライフスタイルリビング」では、若手デザイナーによる革新的な作品展示や国産材活用の取組みを紹介する展示「日本の木 ニッポンの家具」にも出展を果たし、ブランドや豊田産木材の認知向上を図った。 プロジェクトとしては、全国公募で優れた木の活用を評価する「ウッドデザイン賞」も受賞。樋口さんは「将来的には家具のほかにも住宅を作るなど、総合的に豊田産木材を扱い、林業が栄えるような仕組みを確立したい」と夢を語った。