睡眠の専門医が教える、睡眠不足の賢い解消法 毎朝の起床が楽になり週末も有効に!
決してお勧めできない週末の寝だめ
この実験の被験者は普段の睡眠時間が7時間未満と元々短めであったが、睡眠負債解消にはプラス3時間の10時間睡眠かそれ以上が必要だった。私たちの研究に参加した「潜在的睡眠不足」を抱えた被験者も、初日に普段の睡眠時間プラス3時間の10時間30分眠ったのは偶然ではないだろう。 では睡眠負債解消のために週末に長時間の寝だめをすればよいのかというと、これも困る。 実生活で睡眠不足に陥りがちの人は基本的に夜型が多い。夜型の人は平日に出勤や登校のために頑張って起床し、体内時計を朝型にする効果のある午前中の日照を浴びることで遅れがちな体内時計の時刻を早めに巻き戻している。ところが、週末に寝だめをすると肝心の午前中の光を浴びることができなくなってしまうのである。幾つかのシミュレート研究によれば週末2日間の寝だめで体内時計が30分~1時間近くも遅れてしまうという。これでは夜寝付くのが遅くなって、睡眠負債生活から脱却するのは難しい。 平日の睡眠不足と休日の寝だめを繰り返す睡眠習慣は社会的時差ボケ(社会的ジェットラグ)と呼ばれ、生活習慣病や抑うつ、認知パフォーマンス低下のリスクを高めることが分かっており決してお勧めできない。結局のところ、週末の寝だめを1週間に均等分散して睡眠不足も時差ボケも回避することが理に適っている。土曜の朝にプラス4時間、日曜の朝にプラス3時間の計7時間の寝だめをしていたならば、これを1週間に分散し、日々の睡眠時間を1時間伸ばすのである。 毎朝の起床も楽になるし、週末も効率的に使える。夜型で困っている人も週末の寝だめを止めることで平日の寝つきが良くなるので是非お試しあれ。
(三島和夫 睡眠専門医)