<2020センバツ交流試合>制球力抜群の明徳義塾・新地の出来がカギ 鳥取城北は打撃戦に勝機 第1日第2試合
2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)が8月10日から、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われる。10日の第2試合で対戦する明徳義塾(高知)と鳥取城北(鳥取)の見どころや両チームの戦力、学校紹介、応援メッセージを紹介する。※全国大会出場回数は今春のセンバツを含む 【写真特集】抜群の制球力を誇る明徳義塾のエース新地 ◇接戦なら明徳に分 鳥取城北は先手狙う 明徳義塾のエース左腕・新地智也の出来が勝敗の分かれ目になる。3点以内に抑えれば明徳に分があるが、点の取り合いになれば鳥取城北に勝機がある。 新地は2019年秋の公式戦で完投した9試合中7試合が無四死球と抜群の制球力を誇る。直球の球速は130キロ前後だが、内角を厳しく突き、チェンジアップやスライダーを織り交ぜて的を絞らせない。ピンチでも制球を乱さない強心臓の持ち主でもある。 馬淵史郎監督は「守りのリズムがいいと攻撃にもリズムが出る」と強調する。エースがテンポ良く打たせて取り、1点を取る手堅い攻めに加え、強打で大量点も狙える打線を後押ししたい。 鳥取城北の山木博之監督は新地の印象について、「(制球を乱して)自滅する投手ではないので、自分たちで攻撃を作らないといけない」と見る。積極的に狙い球を絞ってスイングしつつ、ボール球を見極めて打者有利のカウントに持ち込めるかがポイントだ。選球眼の良さやファウルで粘って甘い球を呼び込み、昨秋は1試合平均10得点。「好球必打」の素地は整っている。 上位打線では唯一の右打者で、選球眼に優れる河西威飛(いぶき)が突破口を開き、先手を取りたい。【安田光高】 ◇試合巧者の影に卓越した分析力 明徳義塾 昨夏の甲子園経験者6人が残り、試合巧者ぶりが際立つ。2019年秋は県大会3位ながら、四国大会では全4試合で7点以上の大差を付けて相手を圧倒し、頂点に輝いた。 総合力の高さを印象づけたのは、四国大会準決勝の高知中央戦だ。県大会準決勝で競り負けた相手に対し、二回までに16点を奪う猛攻で試合を決めた。背景には徹底的な分析があった。10―11で敗れた県大会の試合映像を繰り返し見て研究。甲子園で通算51勝を挙げた64歳の馬淵史郎監督の下、20日後の再戦では戦術を忠実に実行し、序盤での相手投手攻略につなげた。 攻撃の中心は、奥野翔琉(かける)、鈴木大照(だいしょう)、新沢颯真(そうま)の3年生3人。奥野は俊足で出塁率も高い。主将の鈴木は勝負強く、小柄ながら長打力もある。新沢は四国大会で満塁本塁打を放つなど昨秋の公式戦でチームトップの16打点。馬淵監督も「打撃で一番安定感がある」と太鼓判を押す。 投手陣は昨夏の甲子園を経験した左腕・新地智也(3年)が中心。精密なコントロールを誇り、四国大会は全試合を無四死球で1失点完投した。直球にキレのある左腕・代木大和(2年)、大きく曲がるカーブが持ち味の右腕・畑中仁太(2年)と、180センチを超える投手2人も控える。 センバツ交流試合の実施が決まっても、一部の選手は春夏の甲子園中止のショックを引きずっていた。ミーティングを重ねながらチームは結束を強め、「最後までやりきろう」と気持ちを切り替えて練習に励んでいる。 馬淵監督は「思い出作りだけじゃなく、一生懸命やることがみんなに夢や希望を与える。最後の1球まで全力で戦いたい」と話している。【北村栞】 ◇明徳義塾・鈴木大照主将の話 (鳥取城北は)打撃の良いチーム。(練習再開後は)少しずつ雰囲気も内容も良くなっている。(甲子園での)1試合に、今まで練習してきたことを全て出せるように頑張りたい。 ◇02年夏V 卒業生にプロゴルフ松山英樹 1976年創立の中高一貫校。教職員が学園内で生徒と生活する「師弟同行」を実践する。野球部は76年創部。甲子園では2002年夏に初優勝。相撲部やゴルフ部も強豪でOBに伊藤光捕手(DeNA)、プロゴルファーの松山英樹選手、大相撲の元大関・琴奨菊関、幕内・徳勝龍関ら。高知県須崎市。 ◇「一球入魂で楽しんで」明徳義塾野球部OB会長の明神孝司さん センバツ中止が決まった時は絶望的な気持ちで言葉にしようがなかったです。生徒の気持ちを考えると心配で、OB会として馬淵史郎監督に生徒の健康管理をお願いしました。(プロ野球・阪神などが3年生の野球部員に贈る)甲子園の土が入ったキーホルダーは良いアイデア。自分たちにも何かできないか検討しています。 交流試合は大変喜ばしく、それ以上を望むわけにはいきません。登録メンバーが甲子園大会より2人多い20人となり、3年生の出場機会も多くなると思います。生徒には一球入魂で楽しみ、甲子園を味わってほしいです。 本当は甲子園球場に行きたいですが、テレビで見て応援します。当日は画面にくぎ付けになるでしょう。 ◇打線が看板、劣勢覆す精神力も 鳥取城北 看板の打線は本塁打を連発する派手さはないが、粘り強い好打者がそろう。昨秋の公式戦はチーム打率3割6分6厘、1試合平均10得点。足を絡めた積極的な攻めもあり、中国大会で準優勝した。 中国大会準決勝の創志学園(岡山)戦は、2点を追う五回に一挙6点を奪って逆転勝ち。決勝の倉敷商(岡山)戦では五回までに8点のリードを許したが、主将の吉田貫汰(3年)の3ランなどで六、七回に計6点を返した。劣勢でも諦めない精神的な強さもある。 打線の核は、河西威飛(いぶき、3年)と吉田。昨秋の公式戦の打率が4割6分9厘の河西は、中学時代に15歳以下日本代表に選出された実績がある。選球眼が良く、相手投手の決め球を狙い打つのも得意だという。吉田は思い切りの良いスイングで初球から甘い球を逃さずに仕留める。 最速143キロ右腕の松村亮汰(3年)ら投手陣にも期待が懸かる。松村はあばら骨の疲労骨折のため中国大会で登板できなかったが、冬場にフォームを改善。183センチの長身から投げ下ろす直球の制球力が増した。左腕の阪上陸(3年)は勝負球の精度が抜群。他の投手も力をつけ、交流試合は継投で臨むことになりそうだ。 2015年に、野球部専用のグラウンドが完成。恵まれた練習環境もあり、甲子園への夢を追って県外から入学した選手も多い。春夏の全国大会は中止となったが、センバツ交流試合に向け、「甲子園で勝って、みんなで鳥取に、城北に来て良かったと言って笑顔で終わろう」と誓い合っている。山木博之監督は「今年は3チームを作れるくらい選手層が厚く、総合力も高い。近年(勝って)歌えていない校歌を甲子園に響かせたい」と意気込む。【野原寛史】 ◇鳥取城北・吉田貫汰主将の話 (明徳義塾は)投打ともにレベルの高いチーム。順調に練習できており、投打共にレベルアップできている。甲子園での1試合を大切にして今までやってきたことを出せるようにする。 ◇元大関・照ノ富士関ら多数の関取輩出 1963年創立で野球部は69年創部。夏の甲子園には2009年以降に5回出場し、12年に1勝した。OBに川口和久さん(元巨人)、能見篤史投手(阪神)ら。強豪の相撲部は大相撲の元大関・照ノ富士関、元関脇・逸ノ城関らを輩出。幕内の石浦関は石浦外喜義校長の長男。鳥取市。 ◇「すべての思い込めて」鳥取城北野球部保護者会長・阪上雄司さん 今年は高校野球だけでなく多くの競技で大会がなくなり、生徒たちが悲しい思いをしています。センバツに続いて夏の大会も中止になった時は、(3年生の)息子にかける言葉がありませんでした。1試合でも甲子園で野球ができるようになったのはとても喜ばしく、感謝しています。 開催発表の日の夜、息子から「センバツが決まった時よりもうれしい」と連絡がありました。今後、保護者の観戦が許可されるなら、スタンドで3年生の高校最後のプレーを見届けたいと思います。 交流試合は失うものは何もなく、勝っても負けても笑って終われる大会。選手たちには、野球を始めてから今までのすべての思いをかみしめながらプレーしてほしいです。