にぎわい地震前を上回る 南阿蘇鉄道 熊本地震から8年
2023年7月に全線で運転を再開した南阿蘇鉄道が、再開後、初めての春を迎えました。熊本地震から8年、ようやくにぎわいを取り戻しつつあります。
難工事経て 7年3カ月ぶり全線再開
2016年4月。熊本地震で南阿蘇鉄道には土砂が流れ込んでレールが曲がり、トンネルには亀裂が入るなど、甚大な被害が出ました。全区間17.7キロのうち、高森ー中松間7.1キロは、地震から3カ月後に運転を再開しましたが、全線再開までには7年3カ月の月日を要しました。
行楽シーズンは地震前の113% インバウンド効果も
全線開通後、利用客は地震前よりも増加していて、行楽シーズンの11月は地震前と比べて113%に。その要因の1つがインバウンドです。新型コロナウイルスも落ち着き、韓国、台湾からの観光客が徐々に戻ってきていて、ほぼ毎日、団体予約が入っているといいます。取材をした4月上旬、韓国から約20人の団体客が訪れていました。 韓国からの観光客 「田舎を走る感じもありますし、木がたくさんあるので、韓国の済州島みたいな感じもしますしいい景色です」「ミニ列車みたいな感じですごくいいです。景色も素晴らしい」
一番の見どころ、立野峡谷にかかる第一白川橋梁に差し掛かると「WOW!HOO!」と歓声が。大満足の列車旅になったようで「また、次は個人旅行で訪れたい」という声も聞かれました。 南阿蘇鉄道の津留恒誉社長は「熊本発着の直行便がある台湾、韓国に向けてのPR、TSMC関係への誘客活動も今後行う必要があるかと思います」と話し、インバウンドの誘客にも力を入れたいとしています。
地震、コロナ禍…「地域の人たちが支えてくれた」
南阿蘇鉄道の全線運転再開で、沿線にもにぎわいが戻ってきました。南阿蘇水の生まれる里白水高原駅のそばにある「きしゃぽっぽ」。開店1周年を控えた2016年4月に熊本地震が発生、つづいてコロナ禍と、苦難を乗り越えてきました。店主の渡邉重行さんは「地域の人たちが支えてくれたから今があると思う。そうでなければ到底やっていないと思う。地域の方はすごいです」と話します。
お店の自慢は「ちゃんぽん」。海鮮、肉、野菜のダシがきいた人気の一品です。南阿蘇鉄道の全線再開後は、来店客が増えたといいますが、体力的な不安がある渡邉さんは、以前、飲食店で一緒に働いていた吉村さん親子に引き継ぐことにしました。息子の吉村未来さんは「地域のみなさんと、これから南阿蘇鉄道乗ってこられる方たちがまた来たいと思ってもらえるようなお店にしていきたいです」と語ります。 熊本地震、コロナ禍を経て、にぎわいが戻ってきた南阿蘇鉄道と沿線地域。地域に支えられながら、新たな客も呼び込もうと走り続けます。