クリント・イーストウッド監督や深作欣二監督らが手掛ける“ジャズ映画”4作品を全国無料放送<秋の夜長のジャズ映画特集>
BS松竹東急(全国無料放送・BS260ch)では、9月16日(月)~19日(木)にかけて「秋の夜長のジャズ映画特集」と題し、ジャズ音楽に関わりのある映画4作品を放送。本記事では、江戸時代末期に音楽好きの大名が城中でジャムセッションをする「ジャズ大名」や、伝説のジャズ・サキソフォーン奏者の生涯を描いた「バード」など、ジャズ映画4作品のあらすじや見どころについて紹介する。 【写真】楽器を持って楽しそうにポーズをとる「ジャズ大名」の出演者たち ■幕末の日本にジャズが到来…城中でジャムセッションを繰り広げる「ジャズ大名」 9月16日(月)夜8時からは、映画「ジャズ大名」(1986年公開)を放送。筒井康隆原作の同名小説を、数々の戦争映画を手掛けてきた岡本喜八監督によって映画化された。 江戸時代末期。南北戦争の終結で解放された黒人奴隷のジョー(ロナルド・ネルソン)は、音楽好きな仲間と出会う。彼らはニューオリンズからアフリカへ帰る旅費を稼ぐため、ジョーを中心に楽隊を結成し、夢中になってジャズを演奏した。しかしメキシコ商人に騙されたジョーたちは、日本の駿河湾の庵原藩に打ち上げられ、江戸幕府によって城の地下座敷牢に入れられてしまう…。しかし、大の音楽好きである藩主の海郷亮勝(古谷一行)はジョーたちに会うことになり、城中でジャム・セッションが始まるのだった――。 “日本にジャズがやってきたのは幕末だった!?”という奇想天外な設定を持つ本作の見どころは、ラスト10数分にも及ぶ、地下牢でのジャムセッションだ。思わず身体がリズムに乗って動き出してしまうような疾走感のある演奏は、底抜けに明るい雰囲気を纏っている。 ■伝説のサックス奏者の波乱万丈な生涯を描いた「バード」 9月17日(火)夜8時からは、映画「バード」(1989年公開)を放送。1930年~1950年にかけて活躍した、伝説のジャズ・サキソフォーン奏者であるチャーリー・“バード”・パーカーと、彼の妻・チャンの生涯を描いた作品で、製作・監督はクリント・イーストウッドが担当。1989年のカンヌ国際映画祭ではフォレスト・ウィテカーが主演男優賞を受賞、そして1989年の米アカデミー賞では録音賞を受賞したことでも注目を集めた。 バード(フォレスト・ウィテカー)は、ニューヨークの52番街のクラブでサックス演奏者として成功を収めつつあった。当時出会ったダンサーのチャン(ダイアン・ヴェノーラ)との出会いや結婚、“ビ・バップ”という新しいジャズの演奏スタイルの確立、そしてパリでのコンサートなど、幸せに浸るバード。しかし幸せは長く続かず、バードに影が差し始める。結成したバンドの失敗や娘のブリーの死や、自身の自殺未遂と、転落の一途をたどってしまうのだった――。 わずか34歳でこの世を去るまでのバードの生涯を描いた本作。作中での演奏は、彼自身のオリジナルを復元し、そこにレイ・ブラウンなどの一流ミュージシャンが共演したことで、ハイクオリティな音楽に仕上がっている。 ■献身的なファンとの関係性に涙する「ラウンド・ミッドナイト」 9月18日(水)夜8時からは、映画「ラウンド・ミッドナイト」(1986年公開)を放送。1940~1950年代の代表的なジャズプレイヤー・デイル(デクスター・ゴードン)と、彼を神のように崇める若者の交流を描いた作品だ。 舞台は1959年のパリ。ニューヨークからパリのクラブ「ブルーノート」へやって来た初老のサックス奏者・デイルは、仲間たちと演奏を楽しみながら生活していた。ある日、デイルは古くからのファンを名乗るグラフィック・デザイナーのフランシス(フランソワ・クリュゼ)と出会い、意気投合する。そんな中、デイルは自らの酒癖の悪さが露呈し始め、しばしば病院の厄介になることも。そんなデイルを心配したフランシスは彼を献身的に守り、デイル自身もそのおかげで完全復活を果たす。その後、デイルはニューヨークでの活動を再開するため帰国することを決意。しかし帰国したデイルに、思いもよらない“悪魔”が待ち受けていた…。 本作の見どころは、パリの古い街並みやブルーノートを完全に再現した美しいセットと、ジャズを通して紡がれるデイルとフランシスの心温まる関係性だ。フランシスの献身的なサポートによってデイルの気持ちや行動に変化が訪れる様子を、モダン・ジャズの代表的なテナーサックス奏者、デクスター・ゴードンが存在感たっぷりに演じている。 ■深作欣二監督のこだわりの演出が詰まった「上海バンスキング」 9月19日(木)夜8時からは、映画「上海バンスキング」(1984年公開)を放送。1979年に初演されロングランヒットを記録した同名人気舞台を、「仁義なき戦い」シリーズなどで知られる深作欣二監督により映画化された本作。1930年代後半~1945年にかけての上海を舞台に、時代の波に翻弄される日本人ジャズメンや歌姫の生き様を、歌やダンスを交えながらポップに表現した作品となっている。 1936年夏。ジャズメンである夫・シロー(風間杜夫)と船で上海にやって来たマドンナことまどか(松坂慶子)。2人は、シローの旧友であるバクマツ(宇崎竜童)が働くダンスホールにて、歌姫とバンドの一員として働くようになる。上海での生活を送る中、やがて日中戦争が始まったことで、2人の人生は大きく左右されることに――。 本作の見どころは、国家「君が代」のジャズアレンジなど、ジャズ好きで知られる深作監督ならではのこだわりの演出だ。劇中の音楽はすべて出演者が演奏しており、その臨場感あふれるハーモニーは迫力満点で、聴いていて飽きのこない心地良さを堪能できる。