資さんうどんの中でもトップレベルの売り上げを誇る魚町店＝北九州市小倉北区

　うどんチェーン「資（すけ）さんうどん」を展開する資さん（北九州市）が、外食大手、すかいらーくホールディングス（HD）傘下に入ることが6日発表された。独立系投資ファンド、ユニゾン・キャピタル（東京）が資さんを買収してから6年余り。業績が順調に伸びて「売り時」になる中で、思惑がかみ合い、240億円の大型取引が成立した。 【画像】藤井竜王「勝負めし」は資さん　特別メニュー用意せず 　ユニゾンが資さんの株式を取得したのは2018年。資さんを創業し「北九州のソウルフード」と呼ばれるまでに成長させた大西章資（しょうじ）氏（15年に死去）には後継者がいなかった。大西氏から事業承継を依頼された福岡銀行系のファンドは、大手回転ずしチェーンなどの企業再生に関わったユニゾンに経営を託した。 　ユニゾンは、ファーストリテイリング執行役員やつけ麺チェーントップを務めた佐藤崇史氏を社長に招聘（しょうへい）。経営改革を進めた。店では注文にタッチパネルを採用、「穴子天」など季節限定メニューを導入した。配送や一部の仕入れ・調理を外部に委託。女性の管理職登用を進めた。「お客さま満足度と従業員の働きやすさの向上は（成長の）掛け算。できることはどんどんやった」と佐藤氏は語る。 　店舗運営の効率化や人材育成を図った上で出店攻勢を仕掛けた。福岡・山口のみだった店舗は19年に佐賀県に進出した後はエリアを広げ、昨年12月には九州全県へ出店。大阪や岡山など九州外にも進出し、今冬の東京出店も発表した。店舗数は72店舗（9日時点）と6年間で30店舗以上増え、17年8月期で71億円だった売上高は直近の24年8月期で150億円を超えた。 　交流サイト（SNS）を通じた情報の拡散も後押しとなった。新店舗を発表すると、その地域に住む北九州市出身者らが歓迎のコメントを続々と投稿。反響するように、出店を求める投稿が相次いだ。「味を知るファンが新たなお客さまを作ってくれた」と佐藤氏。ネットで“バズる”たびに知名度を高めていった。 　一方、機関投資家から資金を預かるユニゾンは、買収企業を一定期間で売却して利益を得る必要がある。昨年から売却先を探し、今年から買収を希望する会社との協議を重ねてきた。 　関係者によると、株式取得額は数十億円。240億円の売却額は「まれに見る大ホームランになった」（投資会社幹部）。ユニゾンへの売却に関わった福銀関係者は「売り上げを伸ばし、着実に利益が出る体制を整えた点が高評価につながった」と推測。過去に資さん買収を検討した飲食チェーンの代表は「ネットで名前が全国区になりブランド力が急上昇した。未進出地も多く伸びしろがある点が価格を高めた。買収側は不採算店の資さんへの転換を考えているはずだ」。 　ユニゾン関係者は、売却先の選定に当たり、すかいらーくHDが傘下企業の「自主性、独立性」を尊重している点も重視した、と明かす。「資さんの味や文化は守られながら、全国各地に広がり、いつかは世界に飛躍するだろう」と期待を寄せた。 　（井崎圭）