ブルー・オリジン、1年9か月ぶりに有人宇宙飛行ミッション再開 6人のクルーが搭乗
アメリカの民間宇宙企業Blue Origin（ブルー・オリジン）は2024年5月19日（日本時間・以下同様）、同社の有人宇宙船「New Shepard（ニュー・シェパード）」による有人宇宙飛行ミッション「NS-25」に成功しました。NS-25ではクルーカプセルが海抜約107kmの宇宙空間に達し、地球周回軌道に投入されず地球へ帰還するサブオービタル飛行を実施。搭乗したクルーの1人はアメリカ初の黒人宇宙飛行士候補に推薦された経歴があります。【最終更新：2024年5月27日17時台】 直近のロケット打ち上げ情報リスト
■NS-25ミッションとは
6人のクルーが搭乗したNS-25ミッションのクルーカプセルを載せたNew Shepardは、2024年5月19日23時35分にアメリカ・西テキサスにあるBlue Originの打ち上げ施設から打ち上げられました。クルーカプセルは海抜約107kmの宇宙空間に達したのち、発射約10分後にパラシュートを展開。Blue Originによる公式中継のアーカイブを確認すると、3つあるパラシュートのうち、1つが完全に膨らまず2つのパラシュートで帰還しているのが分かります。公式中継では2つのパラシュートで着陸可能なこと、着陸後に6人のクルーは無事であることが説明されました。 New Shepardによる有人宇宙飛行は2022年8月の「NS-22」以来、1年9か月ぶりとなりました。2022年9月に行われた無人飛行ミッション「NS-23」では発射後にエンジンの問題が発生して打ち上げに失敗しており、原因究明のため2023年12月に実施された「NS-24」まで打ち上げが中断していました。
■6名のクルーはどのような人物？
NS-25ではアメリカ初の黒人宇宙飛行士候補に推薦されたEd Dwight氏をはじめ、6人のクルーがクルーカプセルに搭乗しました。 アメリカ空軍のパイロットだったDwight氏は1961年にジョン・F・ケネディ大統領（当時）によって選出され、アメリカ空軍の飛行訓練プログラムである航空宇宙研究パイロット学校（Aerospace Research Pilot School: ARPS）での訓練に参加。1963年にはアメリカ空軍からアメリカ航空宇宙局（NASA）の宇宙飛行士として推薦されましたが、最終的には宇宙飛行士に選出されませんでした。1966年以降は起業家としての活動や黒人文化を伝える彫刻の作成に携わっていて、130点以上の作品がアメリカとカナダのミュージアムや公共空間に展示されているということです。 フランスのクラフトビール会社「Brasserie du Mont Blanc」の創設者であるSylvain Chiron氏は、16歳の時にパイロットのライセンスを取得。その後、フランス空軍および北大西洋条約機構（NATO）のパイロットのためにスキーインストラクターとして活動しました。軍退役後はTemple大学で国際MBAを取得し、ビジネスを学ぶために東京での滞在経験もあるということです。 公認会計士を引退したCarol Schaller氏は2017年に医師から失明する可能性が高いと告げられて以来25か国を訪れており、エベレストのベースキャンプ滞在や南極点への到達も行いました。NS-25ミッションで宇宙から地球を見ることは彼女の夢が叶ったことを意味します。 Gopi Thotakura氏はホリスティックウェルネスと応用健康の施設「Preserve Life Corp」の共同創設者で、水上飛行機や曲芸飛行機、グライダーなどのパイロットとしても活動していました。Mason Angel氏はベンチャーキャピタルファンド「Industorious Ventures」の創設者です。Kenneth L. Hess氏はソフトウェアエンジニア兼起業家で、STEM教育を行う非営利団体「Science Buddies」を設立しました。 Source Blue Origin – New Shepard’s Crewed NS-25 Mission Targets Liftoff on May 19 Blue Origin – Blue Origin Completes 25th Mission to Space with Six Crew Onboard SpaceNews – Blue Origin resumes crewed New Shepard suborbital flights
出口隼詩 / sorae編集部
