【バレー】警視庁がVリーガーとして最後のゲームへ。「有終の美を飾りたい」
仕事とバレーボールを両立し、これまで戦ってきた警視庁
そんな警視庁がVリーグの舞台から去ることを惜しむ声も。毎年、「春の高校バレー 全日本高等学校選手権大会」に向けた審判講習会も兼ねて、年末に警視庁と練習試合を行うV3男子のトヨタモビリティ東京スパークルの松枝寿明監督は敬意を込めて、このように語る。 「私たちと同じで、本業である仕事とバレーボールを両立されているわけですが、それこそ比べものにならない苦労があるでしょう。一緒に体育館を借りて練習にいらっしゃるときもありますが、時には夜勤明けでお疲れの様子もお見受けします。しっかりと仕事をされて、そのうえでバレーボールに励む姿を純粋にすごいと感じますね」 警視庁の所属選手たちは主に特科車両隊で業務に励んでおり、大規模イベントがあれば、警備にあたることも。「仕事を一生懸命やって初めて、バレーボールとの両立ができるんです」という吉澤キャプテンの言葉は、周囲が思う以上に、そうやすやすと口にできるものではないだろう。 そんな姿に見るものは惹かれる。今年2月、近畿大学記念会館(大阪)の警視庁vs.兵庫デルフィーノの一戦には、神奈川から訪れたファンの方も。話を聞くに、仕事もバレーボールも一生懸命な姿を見て、応援するようになったのだという。そのファンの言葉が、警視庁というチームの魅力を表現するうえで、ぴったりだった。 「仕事と一緒で、コート上でも誠実さが出ると思うんです。ファン対応も優しいですし、まじめだけれど楽しくプレーしている。ふだんは子どもたちが憧れるヒーローで、休日はバレーボール選手というヒーロー、そこがいいですよね」
「気持ちのいい、鳥肌の立つゲームが見たい」というファンの声
警視庁という公的な機関によるバレーボールチームは、国内の中でも特殊な立ち位置にあると言えるだろう。組織内におけるチームの存在意義について、吉澤キャプテンは「まずは広報的な役割が一つ」と言った。そのうえで「僕たちが必死にプレーするかっこいい姿を見せることが、バレーボールの競技人口増加につながればいいなと思いますし、それに警察官が一生懸命にプレーする姿を通して、業務をする上でも皆さんに協力してもらえるような関係につながればと。その両方ができるように、僕たちは頑張ろうと考えています」。 警視庁のホームゲームでは、パトカーや白バイの展示企画もあり、来場した子どもたちは目を輝かせている様子が見られた。と同時に、その会場で目にするプレーが見る人の心に響くものであれば、きっと「バレーボールをしたい」という思いを生むことだってありうる。 Vリーグの警視庁フォートファイターズとして最後のゲームがやってくる。2月末のホームゲームを控えた頃、ファンからは「勝っても負けても気持ちのいい、鳥肌が立つようなゲームが見たいですね」「試合後にあいさつしてくださると思うので、全員で敬礼してほしいかも(笑)」という声が聞かれた。そんな思いに最後の瞬間まで、選手たちは応えるに違いない。 「ほんとうにたくさんの方々が応援に来てくださると思うので。あきらめずに最後の一点まで食らいついていく。たとえ届かなくても、ボールを追いかける。その姿勢で観客の皆さんを楽しませるプレーがしたいですし、勝って感謝の気持ちを伝えたい。有終の美を飾りたいですね」(吉澤キャプテン) このステージで最後まで戦いきると誓った、ヒーローの言葉だ。 (文・写真/坂口功将)
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