「町田のロングスローは対策しようがない」福西崇史が振り返る今季のJリーグ前半戦
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 第99回のテーマは、J1リーグ前半戦について。いよいよ後半戦がスタートしたJリーグ。J1初昇格の町田が首位ターンし、大きなサプライズとなった中で、鹿島やG大阪など、名門が追随する前半戦を上位クラブを中心に福西崇史が振り返る。 * * * 今季のJ1も前半戦が終わり、後半戦がスタートしています。前半戦を振り返ると、昇格組のFC町田ゼルビアが、J1初挑戦にして首位で折り返したことは賞賛に値します。町田はチームとしてのやることが整理、徹底され、J1でも通用するほどの団結力となって、ここまでうまく結果に結びついていると思います。 2位鹿島アントラーズ、3位ガンバ大阪も同じように良い守備から素早い攻撃がうまくはまり、上位3クラブは似た特徴を持つチームだと思います。今季、こうしたチームが優勝争いをしているのは、引き分けの多さやリーグテーブルを見てもわかる通り、Jリーグ全体の力がより拮抗しているからだと思います。 どちらに転ぶかわからない試合を堅守で簡単には崩さず、チャンスでしっかりと決め切る。それを徹底してやれているのが、これらのクラブというわけです。 上位のチームを改めて見ていくと、町田は黒田剛監督のやりたいサッカーを誰が出てもやり切れるチームだと思います。前線のハイプレスから守備でしっかりとハードワークし、ボールを奪えば徹底してオ・セフンやミッチェル・デュークの高さ、エリキや平河悠、バスケス・バイロン、藤本一輝などスピードを生かしたカウンターで、少ないチャンスを決め切る。 あるいは、高さを生かしたパターン豊富なセットプレーも大きな得点源です。今や代名詞となったロングスローも相手を強制的に押し込み、ゴール前のカオスを作り出す手段として非常に有効に使っています。今では他でもロングスローを使うチームが増えてきました。 このようにとにかく町田は武器が豊富にあり、その良さを黒田監督がうまく落とし込んでチームの最大値を引き出していると思います。うまくハマらないときは完敗もしますが、ハマった時は"町田の試合"というくらい圧倒してきました。 対策されると厳しくなるという見方もありますが、守備の強度を保てれば崩れることはないし、あの高さを生かしたロングボールとセットプレーというのは、わかっていてもどうしようもない部分もあります。とくにセットプレーは一番理にかなった得点手段で、そこが強みの町田を抑え切るのは難しいと思います。町田がどこまで走り続けられるのか興味深いところです。