「逃げることはできないとずーっと思っている」笑わない男、稲垣啓太が主張する日本ラグビーの向上に絶対不可欠な“バトル”とは?
「笑わない男」の愛称でも知られる33歳もまた、「コンタクトエリア、フィジカルバトルから逃げることはできない」と「ずーっと、思っています」。小さい者が大きい者を倒すための「スキル」も無視しないが、まずは「まず最低限のフィジカルを持ち合わせる」。骨格、筋肉の質を高めるのを第一義とする。 「土台がない状態でスキルを使っても、付け焼刃みたいな感じになります。自分のフィジカルに、スキルを乗せる。人それぞれのやり方を否定するつもりはないですが、フィジカル(強化)から逃げてはいけない」 話をしたのは昨年12月の初旬。ジョーンズが8年ぶりに代表指揮官に就くと知られるよりも前のことだ。 埼玉パナソニックワイルドナイツの一員として、国内リーグワンのスタートを間近に控えていた。秋に参戦したワールドカップフランス大会を2大会ぶりの予選プール敗退で終えると、「4日」だけ休暇を取り、熊谷市内の拠点で再始動した。 「普通な感じです。日常に戻ってきたなと。動かない休みは、あまり作らない。一人ひとり休みの定義は違うし、ひとそれぞれやり方はありますが、僕は、いつも通り身体を動かしながら整えていった」 大会中に負ったダメージは「治りました。…4日で」とのことだ。 「痛みが大丈夫になったから動き始める…ではないので、僕の感覚は。痛みがあっても、動かしながらよくしていく。程度にもよりますよ、本当に無理なら動けないでしょうし。…自分の動けるレベルを判断しながら、いまの自分の身体を理解してやっていった」 果たしてリーグワンでも、開幕から5戦続けて持ち味を発揮。クラッシュから「逃げない」というこの人の当たり前を貫いてきた。第6節は欠場も、フィールドへ戻れば通常通りのハイパフォーマンスが担保されるか。 取材・文●向風見也(ラグビージャーナリスト)