【京都2歳S】中心はスケール感あるエリキング 新馬組で面白いクラウディアイ、テイクイットオール
2歳2000m重賞の価値
2歳重賞は制した距離に価値がある。たとえば1600mは2歳GⅠであり、ほかにもサウジアラビアRC、アルテミスSと出世レースがならぶ。競走馬にとっての基礎を問われるマイル重賞を2歳で勝てば、基本性能の高さを証明できる。 【マイルチャンピオンシップ2024 推奨馬】持ちタイムNo.1! 勝率33.3%&複勝率66.7%データ該当 (SPAIA) 中距離の基本でもある2000mも同じだ。序盤の位置取り、折り合い、末脚。2歳馬にとって2000mはクリアしないといけない要素が多く、さらに3歳クラシックを戦う上で必要な体力を問われる。2歳で2000m重賞Vは過去にはナリタタイシン、アグネスタキオン、少し前だとロジユニヴァース、ヴィクトワールピサ、近年ではサートゥルナーリア、コントレイルとクラシックウイナーがズラリ。 決して約束手形ということもないが、2000mを勝てる体力とレース巧者ぶりを発揮し、意気揚々と来春を迎えたい。データは20~22年阪神を含め、過去10年分を使用する。 1番人気【3-2-1-4】勝率30.0%、複勝率60.0%をはじめ、2番人気【1-3-2-4】勝率10.0%、複勝率60.0%、3番人気【3-1-2-4】勝率30.0%、複勝率60.0%と上位人気は拮抗ながら、全体的には信頼できる。 5番人気【2-1-2-5】勝率20.0%、複勝率50.0%などキャリアの浅い2歳戦らしく、ちょっとした盲点も存在する。思ったほど力差はない。 キャリアの傾向もみる。1戦【3-1-3-16】勝率13.0%、複勝率30.4%、2戦【4-7-5-28】勝率9.1%、複勝率36.4%と理想とされる最少キャリアでの重賞制覇が目立つ。まずは理想に挑む好素材に注目といったところ。 ただ、4戦【1-0-2-6】勝率11.1%、複勝率33.3%など立ち回りを求められる2000m戦らしく、経験値がいきる場面もある。
新馬Vは脚質がポイント
新馬、オープン2連勝中のエリキングは現状、世代トップクラスにいる。その評価を不動のものとし、賞金的にもクラシックへ向け、ゆったりと春へ向かいたいところだろう。 まずは1戦1勝の前走新馬【3-1-3-16】勝率13.0%、複勝率30.4%について。中京芝2000mで初陣を飾ったクラウディアイ、スリーキングス、東京芝1600mのテイクイットオールなどがいる。 今年の西日本は変則日程。競馬場、コース別成績を当てはめられないので新馬戦での脚質でみる。逃げ【1-1-0-3】勝率20.0%、複勝率40.0%、先行【2-0-1-5】勝率25.0%、複勝率37.5%とデビュー戦で序盤から位置を確保できた馬が強い。 中団からの差しは【0-0-2-6】複勝率25.0%。なくはないが、初戦で前につけられないのは、格上げ初戦の重賞では不安になる。2000mといえど機動力は肝。やはり、レース序盤から流れに乗れる、つくれる馬が強い。 好位から抜け出したクラウディアイ、5番手抜け出しも400mの距離延長のテイクイットオールを評価しよう。新種牡馬サートゥルナーリア産駒は11/10終了時点で20勝。母の父ディープインパクトはクラウディアイを含め【5-3-2-11】勝率23.8%、複勝率47.6%、ちなみに母の父ハーツクライだと【2-1-0-2】で、現状はキングカメハメハ系統らしい王道配合で結果を残す。 テイクイットオールは充実のキズナ産駒。この世代もマジックサンズ(札幌2歳S)、ブラウンラチェット(アルテミスS)とすでに重賞を2勝している。エリキングもいて、好調は続く。 前走オープン・L【2-6-0-8】勝率12.5%、複勝率50.0%は前哨戦にあたる萩Sが【1-4-0-5】勝率10.0%、複勝率50.0%と中心。エリキングの野路菊Sは【1-1-0-0】。2019年マイラプソディが3連勝している。ただ、今年の野路菊Sは阪神芝1800mではなく、中京芝2000mで行われた。2連勝で浮き彫りになった反抗期のような一面が今回、どれほど矯正されているか。どちらかといえば、自身との戦いになりそうだ。 その野路菊Sは5頭立ての少頭数。1000m通過1:04.1の超スローペース。最内枠でスタートは遅れたが、少頭数のスローで挽回でき、1コーナーに入るころには後方2番手の外をとった。ただ、今回はそう易々とはいかないのではないか。 前走は4コーナーで外から進出し、抜け出した。ラスト600mは11.1-10.9-11.6。前をつかまえに行った地点は10.9で、遊びながら走るなどスケール感は抜けた存在。重賞でゲート後手だとわからないが、気分よく走れるかどうかだろう。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳