高齢者の「長い話」の根底にあるのは?「老害」とそうでない行為は見極めが大事
「老害」という言葉は、正しく使われているのか?
高齢者の自分勝手で傲慢なふるまいを揶揄する言葉として、昨今よく使われるようになった「老害」。もし筆者が10代、20代であったら、胸のすくこの言葉の普及を心から喜んでいたでしょう。 しかし、言うより言われる側の年齢に近づいてきた今は、たとえ自分以外の人に向けられていたとしても、老害という言葉を見聞きするたびに少し心が痛むようになりました。 というのも、最近の使われ方を見ていると、高齢者の言動をひとくくりに老害と言っているように見え、正論や含蓄のある提言が押し殺されている気がするからです。 では、老害とそうではない言動との境目はどこにあるのか? それを判断するヒントをくれるのが、礼法家・一条真也さんの著書『年長者の作法 「老害」の時代を生きる50のヒント』です。何かと老害と見なされがちな高齢者が、幸福な日々を送るためのふるまい方を解説した本書。今回はその中から、老害とそうでない行動との違いや、老害の人になるのを避ける行動パターンについて書かれた部分を抜粋いたします!
“偏見”の老害と、“正義”の老害。じつは、2種類の「老害」があった
高齢者の多くは、「自分は“老害の人”ではない」と思っているでしょう。 迷惑行為をしているほかのお年寄りの姿を目にして、「あんな人にはなりたくない」と考えている人も多いと思います。その一方で、「いずれ、自分も“老害の人”と後ろ指をさされるかもしれない」と、謙虚に考える人も少なくないでしょう。 お年寄りというだけで、老害のレッテルを貼る風潮が根強くあります。“偏見”によって決めつけられる、いわれなき「老害」も、残念ながら確実にあるのです。 たとえば、運転免許証の自主返納をめぐる「老害」の議論は、その代表的な例です。息子さんや娘さんから「もう歳だから」と返納を勧められても、運転に自信があれば、首を縦に振らないでしょう。それでよいと思います。 交通網の発達している大都市圏と違い、地方は公共交通機関が未整備で、車がなければ、買い物にも病院にも行けません。免許を取り上げられたら、死活問題です。警察庁が作成した2022年の「交通事故発生状況」という統計によると、高齢者の起こした事故は人口10万人あたりで65~69歳が約300件、70~74歳と75~79歳がともに300件台で、ようやく80歳以上になって400件を上回るようになります。 一方、16~19歳は1000件を超え、20~24歳は600件台と若者のほうが多く、お年寄りの事故が突出して多いわけではありません。 ですが、あくまであなた自身が危険な状況におちいらないために、息子さんや娘さんが心配して、免許証の返納を提案していることだけは忘れないでください。