大企業によくある「目先の収益の最大化」に隠れた落とし穴
ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。 こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。 今回、紹介するのは『両利きの経営 増補改訂版 「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く』(チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマン著、入山章栄 監訳・解説、冨山和彦 解説、渡部典子 訳、東洋経済新報社)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。
両利きの経営とは何か
私が『両利きの経営』という言葉に出会ったのは、10年ほど前に監訳者の入山さんのセミナーを聞いたときでした。一回その話を聞くと主要なコンセプトが忘れられなくなるほどに、クリアで納得感の高い理論だったことが印象に残っています。 本書は前作を増補した最新版になります。入山さんの解説から始まりますので、そこから一部引用しながら、本書の紹介を始めます。 両利きの経営とは、自身・自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうという「探索」と、成功しそうなものを深掘りして磨き込む「深化」という一見相反しそうな取り組みを、まるで左右両利きであるかのようにバランスよく追及することを指します。 ぱっと聞いただけで、組織能力も時間軸も異なるものを同時に追求することの難しさが想像できそうです。そしてこれを怠ると、多くの大企業がおちいるサクセストラップが待ち受けています。 その罠とは目先の収益の最大化を希求するあまり、深化の方に取り組みが偏り、結果としてイノベーションがおこせなくなるというものです。 いかにも多くの日本企業の悩みに当てはまりそうです。そして、それを同時に追求するためには「環境変化が激しい中でも、企業が恒常的に変化して、対応し続ける能力」であるダイナミック・ケイパビリティが必要だとも言われています。 以降で実際に両利きの経営を実現するために必要なことを、本書の中から紹介していきます。