BMWが誇る「M」を冠するスーパーバイクの実力、雨の「もてぎ」で元GPライダー先導で試乗した
■「XR」の圧倒的な安心感 最初に走らせたのは新たに投入されたM 1000 XR。ほかの2台に比べて車体の重心が高い。サーキットではハイスピードの中で常に荷重が変化しており、ライダーのちょっとした操作や体重移動が状況によっては命取りとなるわけだが、M 1000 XRは、多少繊細さに欠ける操作をしても電子制御のダンパーやスロットルがそれを巧妙に補ってくれることを実感した。 ブルーに染められたキャリパーを備えるMブレーキ・システムも、まるでブレーキディスクに直に触るようにシルキーなタッチで扱いやすい。エンジンはトップエンドの出力を削って201馬力に抑えているのだが、自分が所有する先代S 1000 XRの160馬力に比べパワフルなことは如実に体験できた。
ストレート・エンドにおける速度は時速170キロメートル程度だったが、Mウィングレットと電子制御ダンパーの効果により不安定な印象は少しも抱かなかった。 続いて走らせたのは、最上位に位置するM 1000 RR。XRに比べて30kg以上も軽い。サイドスタンドを跳ね上げて車体を起こす時点からその違いを感じる。 これが車両本体価格448万8500円(Mコンペティション・パッケージ。標準型は384万9500円)、スーパーバイクのベースマシンか、と感慨に耽りながらクラッチをミートしたところでエンジンストール(エンスト)してしまった。
フライホイールの重量を削ってあるせいか、リッターバイクといえど発進には気を遣わなければならない。本格的なスポーツ走行に合わせてシート高もけっこう高いから、立ちゴケには要注意である。 ■「ここまでやるのか」という技術へのこだわり M 1000 RR用に限定製作されたエンジンは、元々BMWが技術の粋を注ぎ込んだS 1000 RRのエンジンにさらなるチューニングを施したものだ。雄々しくも整然とした排気音や放たれるパワー自体はほかのMシリーズと大きく変わらないように思えたものの、顕著な違いを感じたのは加速を終えスロットルを閉じて、エンジンブレーキを生じながらカーブへ進入していくシーン。