カナダに亡命“民主化の女神” 周庭氏がYouTube再開も怯える日々…「中国の秘密警察が動き出すかと心配。身の安全が不安」
「香港民主化の女神」と呼ばれる民主活動家・周庭氏（27）が、3年ぶりにYouTubeを再開した。 【映像】香港市民の自由を奪う「中国化」
周庭氏は民主化活動により、これまで2度の逮捕と、禁錮10カ月の実刑判決を経て、現在はカナダ・トロントへ事実上の亡命。保釈中だったため、香港警察から指名手配されている。周庭氏は1996年12月3日生まれ。翌年の1997年7月に、それまで150年以上イギリス領だった香港が、中国へ返還された。民主主義国家から共産主義国家へと移行するなか、混乱や反発を考慮して、返還後50年間は、これまでの香港のシステムを続ける「一国二制度」を維持する約束を取り付けていた。しかし香港政府は、愛国教育のカリキュラム改革に着手する。 現代中国を専門としている、東京大学大学院・現代中国研究の阿古智子教授は、「教育を受ける当事者である高校生・中学生が、こんな愛国教育を受けたら、自分の頭で考えて、自分らしい表現ができなくなる危機感を感じて、中高生が中心に立ち上がった」と説明する。その中には、当時15歳の周庭氏も参加していた。
また当初は、香港行政長官選挙に直接投票を導入する意向が示されていたが、2013年の習近平国家主席の就任により、民主派の立候補を制限する方針が打ち出されてしまう。そこで周庭氏は仲間とともに、民主化を求めて「雨傘運動」と呼ばれる大規模デモを主導。しかし習近平指導部の強制排除により、79日間でデモは終結した。 2019年には、中国本土への容疑者の身柄引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤回を求めるデモが行われ、一時は人口の4分の1以上となる200万人が参加。周庭氏は同年8月、無許可集会扇動などの容疑で逮捕された。その後、改正案は完全撤回されたが、普通選挙の実現を求めて、デモは拡大した。2020年6月、香港での反政府運動を取り締まる「香港国家安全維持法」が施行された。周庭氏は8月、同法違反の容疑で逮捕され、翌日に保釈されるも、12月にデモを扇動した容疑で禁錮10カ月の実刑を言い渡され、11月を最後にYouTube投稿が途絶えた。2022年には、民主派の活動を取り締まってきた、警察出身者の李家超氏が行政長官に当選。自由化が事実上鎮圧される一方、周庭氏は2021年6月に出所し、2023年末にカナダ留学を宣言。「おそらく一生香港には戻らない」と語り、事実上の亡命状態にいることを明かした。 SNSでは「刑務所から釈放されて、3カ月に1回警察署に出頭しないといけない状況」「カナダの大学で勉強したいという申請を国安警察に提出。懺悔書や警察への感謝の手紙を書かされたり、中国大陸に連れて行かれたりもした」と告白していた。阿古教授は「愛国教育に反対していた若者へ、愛国教育をするのは拷問に近い。精神的な拷問」と指摘する。カナダ留学により、「3カ月に1度の出頭」という保釈条件が破られたため、香港警察は周庭氏を指名手配し、「自首しない限り一生追跡され逮捕されるだろう」と警告した。周庭氏は「カナダにいる中国の秘密警察が動き出すかと心配」「一番の不安は自分の身の安全」などとSNS投稿している。 「拘束して連れ戻すとか、カナダの領域内で行うのは基本的に難しいが、脅すことによって萎縮効果を生む。他の人たちが行動や発言に気を付けるようになる。（香港の中国化が進むのは）政権が不安定だから、国家の安全を持ち出して、習近平政権の優位性を示す。だから香港も中国化が進められてしまう」（東京大学大学院・阿古智子教授） （『ABEMA的ニュースショー』より）
