京都で8年ぶり!村上隆の作品170点集う大規模展、約7カ月のロングラン開催
■ 5万名先着の限定カード、開幕3日目に終了
世界的な現代美術家・村上隆氏の8年ぶりの大規模展覧会『村上隆 もののけ 京都』が「京都市京セラ美術館」で開催中。日本初出展作品から代表作を含む、約170点の展示作品のうち9割近くが新作で大作ばかりとあって、国内外のアートファンが熱い視線を注いでいる。 【写真】人と比べてもこんなに…!村上の大型作品 帝がおわした1000年の都として、陰陽師が暗躍し、琳派などの絵師たちが活躍した京都は、伝統と芸術、芸能、祭礼が今なお息づいている。華やかな面がある一方で、人間社会の暗いドロドロした面も合わせ持つ重層的な京都を、同館の高橋信也氏のキュレーションにより、新たな村上ワールドとして解釈した壮大な内容だ。 また、同展で披露する新作の制作資金調達のため、京都市と協力して「ふるさと納税制度」を使い、その返礼品に「トレーディングカード」付き入場券が登場したことも開幕前から話題を集めていた。そしてこのカードとは別に、5万名先着で配布された限定カードは、開幕3日目にして配布終了の事態となった。 展示は大きく6つの部屋に分かれており、入ってすぐに目玉作品のひとつ『洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip』が出迎えてくれる。ユニークなのが、画面を覆う金色の雲をよくよく眺めると、金箔の中に無数のドクロを発見できる点。京都近郊に存在した葬送地のひとつ鳥辺野(とりべの)で感じた「この世とあの世」を表そうとしているという。京都の煌びやかな表層だけでなく、深層にうごめく「もののけ」が感じられる。
■ 「ドキュメンタリー的な文脈、汲み取って」
さらに、江戸時代に京都を中心に活躍した俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一ら絵師たちの代表作を独自解釈し、再構築した新作や国内初公開作品も見逃せない。彼らの作品に当時の世風が表れていると解釈し、俵屋宗達作の国宝『風神雷神図屏風』を独特のゆるさで脱力系にした『風神図』と『雷神図』を後世の人が見れば、「21世紀はこんなカワイイ感じだったのね」と思うのではないだろうか。 そのほか、アイコンキャラクター・DOBくんなどが展示された、村上氏が2000年に提唱した「スーパーフラット」を示す部屋も。「スーパーフラット」は日本の伝統的な絵画とアニメーションなどが持つ平面性と日本文化の同質性、社会構造の平質性を示し、世界の現代美術シーンに重要な影響を及ぼし、アメリカに追従した日本の歪んだ形としてキャラクター文化を位置付けている。 最後に、各部屋で作品とともにチェックしたいのが「言い訳ペインティング」だ。自らの「言い訳」を吹き出し口で語っている体で、なんと、まだ一部作品が完成していないと告白しているから驚きだ。完成したら取り替えるという特殊な展示形式などについて村上氏は、「ある意味、ドキュメンタリー的な文脈を汲み取って、鑑賞して」とユーモア溢れる「言い訳」をしている。 京都市美術館開館90周年記念展『村上隆 もののけ 京都』は、「京都市京セラ美術館 新館東山キューブ」にて9月1日までのロングラン開催。料金は一般2200円ほか、詳しくは公式サイトにて。 取材・文・写真/いずみゆか