日産が「スマート工程」でめざす職場環境…働き方の多様化や人手不足に対応
取り組みがいち早く進められた、日産九州工場
日産自動車は、「スマート工程」に関する説明会を、8月23日に実施した。スマート工程とは、工場での人材不足や働き方の多様化に対応し、女性やシニア世代など、それぞれの能力や希望に合った働き方を実現するための取り組みだ。 今後の日本社会は少子高齢化によって、労働人口は減少するとともに、シニア世代の割合は増加する。これによって、2030年には労働人口が644万人も不足すると考えられているという。そのほかにも、地政学的問題やパンデミック、物流の人手不足など様々な社会問題がある。今年から導入した新日産生産方式を通して、これらの課題にも対応するというのが日産の狙いだ。 ◆スマート工程とは スマート工程は、新日産生産方式の具体的な活動の一つ。「全従業員が喜びを実感できる職場づくり」を軸に、「プライドを持てる職場づくり」と、「人に優しく多様な人材が活躍する職場づくり」を目指す。この目標の実現に向けて4つの具体的な取り組みが挙げられた。「時間制約からの解放」「身体的負担の軽減」「かんこつに頼った仕事の解消」「精神的不安からの解消」だ。日産は、これらの施策において、2030年に間に合うようにロードマップを作成している。 ◆実際の取り組み 時間制約からの解放の例として、メインラインとサブラインを用いた柔軟な労働時間が紹介された。現状、生産拠点では朝の8時から業務が開始されるが、従業員に子供がいる場合には送り迎えが難しかったり、家族の介護をする従業員にとっても負担となっているという課題がある。そこで、子育てを行う従業員は1時間遅れで出勤をしてもらい、子供の迎えの時間に合わせて早めに退勤できる仕組みの導入を進める。 この制度を利用する従業員は遅れて出勤することになるので、出勤後はすでに稼働しているメインラインに入るのではなく、サブラインでの業務を行う。その後、メインラインに復帰し、迎えの時間に近づいたらサブラインに戻るという働き方だ。一方、高技能のシニア社員はメインラインにおいて長時間作業をすることが体力的に難しい。朝夕の若手がいない時間はメインライン、日中はサブラインに入ることで効率的なローテーションを行う。 この取り組みは、日産側から世の中のライフスタイルに合わせる形で、利用の拡大を目指す。現在、この制度の導入が進んでいる工場での利用率は1%ほどだが、今後男性のみならず女性の採用も拡大するとのことで、子育て世代のための柔軟な労働時間に対応していくという。なお、この方式にはもう一つメリットがある。時間制約がある社員、例えば育児に専念しなければならない女性でも、技能向上への意欲が高い社員は多いという。サブラインの作業のみではどうしても技能を磨くことが難しいが、メインラインにも入れるため時間と技能の両立を実現することが可能だ。
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レスポンス 小國陽大