「ワンダーハッチ」キャスト陣が語る「ついて行こう」と決意させた監督の熱量!「日本人の僕らだから作ることができた」
ディズニープラス「スター」が放つオリジナル・ファンタジーアドベンチャードラマ「ワンダーハッチ 空飛ぶ竜の島」(ディズニープラスで独占配信中)。本作は神奈川県の横須賀に住む女子高校生ナギと、“異世界”のウーパナンタからやって来た半人前の“ドラゴン乗り”、タイムが力を合わせ、2つの世界を襲う危機に立ち向かっていく姿を、“実写”と“アニメ”を使用した画期的な手法で描きだしていく。 【写真を見る】ミステリアスな男、スペースを演じた森田剛。“唯一無二の色気”を醸しだす撮り下ろし 物語も佳境に入った第7話まで配信中の本作で、主人公のナギを演じた中島セナとタイムに扮した奥平大兼、ドラゴン乗りの元英雄で現在はコンビニで働く"謎の男"柴田/スペースを怪演した森田剛、『東京喰種トーキョーグール』(17)や『サヨナラまでの30分』(19)を手掛けた萩原健太郎監督が、ドラゴンでの飛行シーンから、クライマックスを盛り上げる壮絶なアクションの舞台裏まで、ほかの現場とは趣の違う撮影を振り返った。 ※以降、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。 ■「あのディズニーが日本でつくる作品に参加できるのが本当にうれしかったです」(中島) ――萩原監督にまず伺います。実写とアニメで一つの世界を描くという本作のアイデアはどのように湧き上がったのでしょうか? 萩原健太郎(以下、萩原)「漫画原作の映画を昔制作した時に、漫画の世界は1人の漫画家が描いているので、すごく画一的な思想で成立していることに気づいたんです。その時に、漫画のキャラクターたちが、もし、いろいろな価値観や矛盾したものが折り合いをつけながら成り立っている現実世界に現れたら、より人間的に、多面的に成長していくんじゃないかなと思って。そこから始まった感じです」 ――キャストの皆さんは、そんな本作のどこに魅力ややり甲斐を感じました? 中島セナ(以下、中島)「いままでに見たことがない、実写とアニメの一緒になる世界観に惹かれました。それに私自身アニメが大好きで、ディズニーアニメーションも小さいころから観ていたので、あのディズニーが日本でつくる作品に参加できるのが本当にうれしかったです」 奥平大兼(以下、奥平)「僕も最初にこの企画を聞いた時に男心をくすぐられました。そのあとに萩原監督から、思い描いている物語や斬新な設定をお聞きしたんですけど、その時に“誰も見たことがない作品をつくってやろう!”という監督の勢いや熱を感じて。僕もそれでますます参加したいなという想いが強くなりましたね」 森田剛(以下、森田)「僕もやっぱり実写とアニメで一つの物語を描くというのが、おもしろそうだなと思ったし、そこで生まれる“違和感”を経験してみたいと思いました。大人にとっては違和感ですけど、子どもが観たらまた違う感覚になるかもしれないですしね」 奥平「ああ、確かに。いまの人たちはアニメがけっこう身近にあるから、どういう反応をするのか知りたいところですね」 ■「本気で大人が“ファンタジーの世界に生きる”ということを伝えたいと思いました」(森田) ――中島さんが演じられたナギは音に色がついて見える特殊な能力を持った、繊細で複雑な女の子でしたか、どんなことを心掛けて臨みましたか? 中島「やっぱり、(音に色がついて見える)“共感覚”は意識しました。あと、ナギのように学校や周りの人たちに馴染めない、それを負担に思う子が中学生や高校生の時は多いような気がするので、その感覚も大事にして。そんな彼女がタイムと出会って、どんどん前向きになっていくように見えたらいいなと思っていました」 ――奥平さんが演じたタイムはどちらのパートにも登場するキャラでしたが、撮影はどちらが先だったんでしょうか。 奥平「実写パートが先でした。ただ、実写の最初のほうのシーンはアニメの世界から出てきた人っていうのを表現するために、普段はやらないような不自然な動きを敢えてしていて。頻繁に腕を組んでいたから、それが癖になっちゃいました(笑)」 萩原「日本人って、喋る時にあまり動かないじゃないですか。だから、そういうボディランゲージをやってもらったんです」 奥平「でも、撮影は4か月にもおよんだから、後半のシーンではタイムが身体に馴染んでいたし、お芝居が大変だなと思うことはなくて。そのあとのアニメパートの声のお芝居のほうが苦労しましたね」 萩原「最初に出水ぽすか先生のキャラクターデザインがあって。それを基に、実写チームとアニメチームがそれぞれのデザインに落とし込んでいく流れだったんです。で、重力に反していて、表現するのが難しいデザインのものも敢えて実写でチャレンジしたんですけど、どうしても無理なものはアニメのほうのデザインを変えてもらって。キャラクターの顔を実写とアニメで寄せるのか?という話もしましたが、最終的には寄せるのはやめて、それぞれのよさを活かしたデザインにすることで落ち着きました」 ――森田さんが演じたスペースは、正体を隠して「柴田」と名乗っている最初の登場シーンから異様な存在感がありました。 森田「でも、あり得ないですよね。異世界から来て、コンビニで働くって(笑)。だから、その違和感をどこまでリアリティを出してやるのかっていうのが僕のテーマで。アニメパートに関しては、アニメキャラクターっぽくやらないということを心掛けていたような気がします」 萩原「スペースって描かれていないことが多いんですよ。ウーパナンタを崩壊に導くジャイロと対決の末、現実世界に飛ばされてしまってから10年も経っている設定なのに。実は脚本の段階では過去のシーンもあったんですけど、それを敢えて取っ払っちゃったので、森田さんはめちゃくちゃ大変だったと思います」 森田「子どもが観るかもしれないっていうのは、すごく意識していたかもしれないですね。嘘がバレないようにと言うか、こういうファンタジーだからこそ、本気で大人が“ファンタジーの世界に生きる”ということを、僕はスペースで伝えたいと思って。まあ、監督と会った時に、“(やりたいこと、伝えたいメッセージを)詰め込んだな!”“これをやるんだな、この人は!”っていうのを感じたし、そこでやっぱり、僕もついて行こうっていう気持ちが強くなりましたからね」 ■「今回一番大変だったのは、圧倒的にウーパナンタ語ですね(笑)」(奥平) ――まさに新しいことがいっぱい詰まった作品ですけど、キャストの皆さんが本作で初めて挑戦したことはありますか? 中島「私はそもそも、4か月にもおよぶ撮影自体が初めてだったんです(笑)。ファンタジー作品も初めてだったし、CGを使ったここまで大規模な撮影も初めて。本当に初めてのことばかりだったから、すべてがすごく新鮮で楽しかったです」 ――第4話ではタイムと一緒にドラゴンのガフィンに乗って空を飛ぶシーンもありましたが、撮影はいかがでしたか? 萩原「あれ、難しいんですよ。ガフィンが意外と小さいので、2人を乗せて飛ぶシーンのリアリティを作るのが大変で」 奥平「現場では、スタッフさんたちが下でグワーって揺すってました(笑)」 萩原「でも、それだけだと違和感があるので、あの飛行シーンの時のガフィンのCGは120パーセントぐらいデカくしてるんですよ(笑)」 奥平「ああ、そうなんですね!でも、僕が今回一番大変だったのは、森田さんもたぶんそうだと思うんですけど、圧倒的にウーパナンタ語ですね(笑)。この世にない言葉を喋ることは、大変でした」 森田「気が狂いそうだった(笑)」 奥平「スゴかったですね、本当に。普段絶対しないような発音なのに、それをスラスラ喋らなきゃいけないから、あれはなかなか難しいものがありました」 森田「量にしたら僕は全然少なかったけれど、あの時期は呪われていて。ちょっとボーっとすると、ウーパナンタ語が自然に出てきて、勝手に喋ってるみたいな(笑)」 奥平「いや、本当にそうでした(笑)」 萩原「あれは人工言語の研究をされている東大の中野智宏先生が、本作のために作ってくださったオリジナルの言語で。名詞でつながっているのではなく、文法もちゃんとあるから、原語的な説得力もあるんですよ」 奥平「僕、文法書をもらいましたよ」 ――文法書まであるんですね!? 萩原「でも、ちゃんと喋れる人は中野先生しかいないという(笑)」 中島「私のセリフは『カサミ・ダミダラ(“世界を救う”という意味のウーパナンタ語)』だけでよかった(笑)」 奥平「ああ、そうだったね(笑)」 ■「ファンタジーの世界観を、実写でどう現実味を持たせて描くかが作品全体のチャレンジでした」(萩原監督) ――森田さんはほかにも、初めてやった大変なことはありましたか。 森田「やっぱりアクションですね。俺、アクションをやるって最初のうちはわかってなくて。監督に会ってから、どうやらアクションがあるっぽい、これは大変なことになったぞと思ったし、ちょっと騙されたような気分でした(笑)」 中島&奥平「(爆笑)」 萩原「あっ、最初は、もしかしたらアクションがふんだんに盛り込まれている第7話、第8話の台本が渡っていなかったのかもしれないですね」 森田「たぶん、そうだと思います」 ――でも、そんなことを感じさせないぐらい、アクタ(タイムが憧れていた“ドラゴン乗りの英雄”)に扮した新田真剣佑さんとのクライマックスのアクションはカッコよかったし、すごい迫力でした。 森田「彼(新田)は若いけれど、師匠みたいでした。合わせてくれるところは合わせてくれるし、ちゃんとリードしてくれて。アクションチームはけっこうおじさんばかりだったけれど(笑)、みんなヒーヒー言いながら殺陣(たて)を一生懸命考えてくれました。僕は何度も“無理だ!もう、やめとこう”って思ったけれど、仕上がったものを観た時はやっぱりすごい迫力で、カッコいいなと思いました」 萩原「本作のクライマックスでスペースがアクタと戦っている場所は、上空100m、直径15kmのピュトンピュトの上が舞台なんですね。でも、実際は(合成用の)グリーンバックを張った、なにもない狭いスタジオで撮影していて。そこで、風がビュービュー吹いているような状況や、そんななかでどれぐらいの声量で喋ったら声が届くのか、といったことはなかなかイメージできないですよ。今回はそのファンタジーの世界観を、実写でどう現実味を持たせて描くのかといったことが作品全体のチャレンジでした」 ――実際にはどんなことをされたんでしょうか。 萩原「CGチームが実際に実写の現場にきて、カメラや役者の動きによってCGで描かれた背景を動かし、どう変わるのか、どうしたら広い画になるのか、といったことをリアルタイムで確認しながら撮影したんです。それはわりと新しい、日本ではまだあまりやられていない手法だったんじゃないかなと思います」 ■「タイムが最後に出す答えは、彼にしか出せないものだったと思います」(奥平) ――本作はファンタジーやアクションの要素もありますが、根底にあるのはナギとタイムの成長の物語です。そのあたりで、中島さんと奥平さんはなにか意識したところはありますか? 奥平「序盤と後半ではタイムの心情や考え方は変わるし、どんどん自分の答えを見つけながら成長していくので、その積み重ねていく感じはシーンごとに意識していました。それこそタイムは、最後に究極の選択を迫られます。ネタバレになるのであまり詳しいことは言えないけれど、タイムが最後に出す答えは、究極の選択を迫られた彼にしか出せないものだったと思います」 中島「ナギはすべて不信感から入るんですよね。学校に対しても周りの人や大人たちに対してもそう。タイムのこともたぶん最初は全然信じていなかったと思うけれど、タイムが本当にまっすぐな人だったから、彼女もどんどん変わっていくことができたと思うんです。そのあたりの、ナギ自身の考え方が明るくなっていくところは意識していました」 ――今回が皆さん「はじめまして」だったと思うのですが、長期間の撮影を通してお互いの印象は変わったんでしょうか。 奥平「最初のころのセナさんは、わりと静かな方なのかなっていう印象だったんです。でも、撮影中はタイムとナギ、(ナギの親友の)ソンが一緒にいることが多くて、ソンを演じたエマくん(エマニエル由人)が楽しい人だったからかもしれないけれど、彼がちょっとふざけた時にセナさんもすごいノリノリになって。思っていたよりも明るい人なんだなって、その時に思いました(笑)」 中島「私も最初は奥平くんのことを静かな方と言うか、クールな人だなと思っていましたね。だから…」 奥平「エマくんが一緒にいなかったから…」 中島「また違った関係や空気感になっていかもしれないですね(笑)」 ――お2人の森田さんの印象は? 奥平「森田さんはやっぱりスペースのイメージが強かったので、最初のうちは怖かったですね。でも、第8話の撮影のころはスタジオで一緒にいることも多かったから、年下の僕が言うのもなんですけど、物腰が柔らかくて、気さくな方なんだというのがわかって。それぐらい最初と最後のギャップがありました」 中島「私は、残念ながら森田さんとあまり話せてないですね」 森田「話してないかもしれない!」 奥平「セナさんはそもそも、森田さんと一緒のシーンはあまりないものね」 森田「でも、僕は下の世代と言うか、若い人たちと仕事をする機会があまりないから勝手に楽しんでいました(笑)。大人になると、無意識に芝居をセーブしたり、コントロールしちゃうじゃないですか。でも、彼らを見ていると振り切ってる感じが毎回して。それがちゃんと作品にも出ているからすばらしいなと思いました」 ――最後に、これから本作を観る世界中の人たちにメッセージをお願いします。 中島「実写とアニメで一つの世界を描く、まったく新しいファンタジーなので、やっぱりその感覚は味わって欲しいし、私自身も見て楽しかった壮大なセットやナギとタイムの成長も見ていただけたらうれしいですね」 奥平「タイムとしてはいろいろ伝えたいという気持ちもあるんですけど、それ以上に、この作品を純粋に楽しんでほしいですね。実写とアニメで描くこういう日本のファンタジーもなかなかないし、独自の世界観の物語になっていると思いますから」 森田「映像がもちろん綺麗なんですよ。めちゃくちゃ。でも、それと同じぐらい、登場人物たちの心もすごく綺麗で。そこがこの作品の魅力なのかなと思っているので、その綺麗な心を感じてもらえたらうれしいですね」 萩原「日本を舞台にしたヒーローものを作りたいという想いもありました。マーベルは僕も好きで観ますけど、あれはアメリカ的なヒーローの答えだと思うんですよ。じゃあ、日本でヒーローを描いたら、どういう答えを出すのか?そこの描写は、やっぱり日本人の僕らだから作ることのできるメッセージだと思っていますし、ナギは日本人だけど、その答えを出すのがウーパナンタ人のタイムというところには皮肉も込めています。そのメッセージを日本の人たちにも感じ取ってもらいたいし、タイムが出した答えを世界中の人たちがどう受け止めるのか。そこは僕自身もちょっと楽しみしているところです」 取材・文/イソガイマサト