《ブラジル》倹約家だった父の〝幻の遺産〟=スーツケースいっぱいの紙幣
北東部トカンチンス州アラグアイナ市に住む兄弟が、父親の遺品整理中に、ブラジルの旧貨幣「クルザード」が大量に入った古いスーツケースを発見した。中には、紙幣と硬貨合わせて大枚3200万クルザードが入っていたが、この遺産は現在の価値で果たしていくらになるのだろうか。30日付G1などが報じた。 クルザードは1986年にインフレ抑制を目的として、当時の通貨クルゼイロをデノミネーションにより千分の1に切り下げる形で導入され、89年までの約3年間のみ流通していた貴重な貨幣だ。 その後、クルザード・ノーヴォ(1989―1990)、クルゼイロ(1990―1993)、クルゼイロ・レアル(1993―1994)と短期間で次々と変更され、最終的に現在のレアルが導入された。 このお金の持ち主であるパウロ・アブレウさんは、長年にわたりタンス預金を行っており、その貯蓄は非常に厳重に保管されていた。彼が77歳で亡くなった2012年に、息子たちが総額3200万クルザードもの隠された遺産を発見した。 パウロさんの息子のワロアールさんは、「親父は高齢になってから銀行にお金を預けるのをやめたんだ。銀行を信用していなかったからね。でも、こんなに貯めていたとは知らなかった」と話した。 パウロさんは生前、金鉱で働き、30年間歯科医としても従事し、その傍らで家を建築して売ったりもしていたという。ワロアールさんは「親父はとても倹約家で、あまりお金を使いたがらなかった。もしこの残された遺産を銀行でレアルに換金できれば、僕らは新たな人生を始めることができるかもね」との夢を語った。 確かに、専門家によれば当時はこのお金で、寝室2部屋、居間、台所、浴室を備えた家を8軒以上購入できるほどの価値があったという。ただし、インフレや通貨の切り替えなど様々な要因により、現在の通貨レアルに換算するのは非常に難しく、残念ながら金銭的価値はないのだという。 コレクターには関心を持たれる可能性があるものの、リオ州貨幣学クラブのアンドレ・ルイス・パジーリャ会長は、「大量に刷られた紙幣であることから希少価値が下がり、さらに折れ曲がり、重なった状態でシミや汚れもあるため、もはや価値を持たないと言えます」と説明した。 一方で、これらの貨幣は国の歴史にとって重要な価値を持つため、次世代の教育に寄与する可能性は大きい。同会長は「このコレクションは学校や教育機関、あるいは博物館や文化施設などの地域の歴史を保存する機関に寄贈することができます」と博物学的な価値を強調した。