『機動戦士ガンダム』令和なら不適切? 「昭和」ならではのシーンや人物描写
敵でありながら清々しい一面を見せた「ランバ・ラル」
また、アムロにとって「ランバ・ラル」との出会いは、大きな出来事だったでしょう。ジオン軍の大尉で、生粋の軍人であり、いわゆる「大人」です。 アムロは、ランバ・ラルおよびその内縁の妻である「クラウレ・ハモン」と酒場で居合わせます。その際ハモンは厚意でアムロの食事代を奢ろうとしたところ、アムロは「あなたにものを恵んでもらう理由はありませんので」と断りました。ランバ・ラルもアムロのことを気に入り、「それだけはっきりものを言うとはな」「わしからも奢らせてもらうよ」と伝えます。お互い、敵対する勢力に所属する者どうしであることに気付いていないなかでのやりとりで、個人的にはハモンやランバ・ラルの粋な計らいに清々しさを感じました。 その後、アムロを探していた「フラウ・ボゥ」が、ジオン兵士に酒場まで連行されてきて、ここでアムロが連邦軍の一員であると発覚します。アムロが咄嗟に銃を握る行動を察知したランバ・ラルは、「それにしても良い度胸だ。ますます気に入ったよ」「戦場で会ったらこうはいかんぞ。頑張れよ、アムロくん」といって、彼らを見過ごしました。 もしアムロやフラウがスパイと認識されたら、その場で射殺されてもおかしくない状況です。アムロたちの後をつけることが目的だったとしても、まだ子供だったふたりを見過ごしたのは、ランバ・ラルの度量の大きさを感じられる場面でした。 個人的にファーストガンダムは、敵同士だとしても、対話でのつながりを描くのが魅力のひとつだと感じています。また筆者は、上述した場面に対して「昭和の人間ならではの気持ちよさ」と受け止めており、近年で言うところの「イケメンキャラ」とは違う魅力がにじみ出ているように思います。 作品は変わりますが、アニメ映画『ルパン三世 カリオストロの城』のラストで、ヒロインの「クラリス」を置いてルパンたちや銭形警部が去った後、庭師の老人が「何て気持ちの良い連中」と評したのを覚えているでしょうか。ファーストガンダムを振り返ると、老人のセリフが当てはまるような数多くの立派な大人たちが登場したように思います。戦争に命をかけた彼らが散っていく様子は、そういった背景もあることから、より心に響くのかもしれません。
LUIS FIELD