「連続ドラマW　石の繭　殺人分析班」(ファミリー劇場)

警視庁捜査一課の刑事・如月塔子が、さまざまな事件に立ち向かっていく、麻見和史の人気警察小説シリーズ第一弾「警視庁殺人分析班」。ドラマ化された本作品で正義感が強いが、そそっかしく無鉄砲な一面も持つ主人公・塔子を木村文乃が演じている。木村が刑事役を演じるのは本作が初めて。また、脚本は「舟を編む」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した渡辺謙作が手掛けたことも話題となった。実力派俳優＆クリエイターが揃った、見応え抜群の本格ミステリーに仕上がっている。 【写真を見る】女刑事を演じる木村文乃 刑事であった亡き父の遺志を継ぎ刑事となり、念願がかなって捜査一課に配属された新米刑事・塔子。そんなある日、東京・新橋のビルで肩から下をモルタル(砂とセメントと水とを練り混ぜた建築材料)で固められた男性の遺体が発見される。翌朝、捜査本部に犯人を名乗る男から電話が入り、塔子が話をすることになる。"トレミー"と名乗るその男は、事件のヒントを提示しながら警察を挑発。トレミーに翻弄されながらも、捜査を続ける塔子らだったが、トレミーの予告通りにモルタルを使った第2の殺人事件が起きてしまう。犯人の目的とは？　そして、犯人はなぜモルタルにこだわるのか？　塔子と仲間たちの捜査によって、少しずつ犯人の狙いが明らかになっていく。 凄惨な事件が続くが、その中でも木村の凜とした美しさと透明感は健在。塔子とコンビを組む警部補・鷹野秀昭役の青木崇高をはじめとした、ワイルドな男性刑事たちとの対比で、より彼女の美しさが際立つ。最初は「すみません」とすぐに謝ってしまったりと、まだ刑事の仕事に慣れていない塔子からは頼りなさも感じられるが、それでも必死に捜査に食らいつく姿が健気で応援したくなる。上司や先輩に認められてうれしそうに仕事に邁進したり、被害者のことを思って怒り悲しんだりと、感情の起伏がしっかりと表現されているところも大きな魅力だろう。そんな人間味あふれる塔子を木村が丁寧に演じることで、視聴者は塔子というキャラクターに親近感を持ち、より作品へと没入することができるのだ。最初はおどおどとしていた塔子が仲間たちの協力のもと、捜査の中で成長し、一人前の刑事となっていく課程を木村は持ち前の演技力で見事に演じ切ってみせた。 2015年に放送されたこの「石の繭　殺人分析班」が大きな反響を呼び、翌2016年にはシリーズ第3作「水晶の鼓動 殺人分析班」の放送が決定。その後も、2019年にテレビドラマオリジナルストーリーとなる「悪の波動 殺人分析班スピンオフ」、シリーズ第7作「蝶の力学 殺人分析班」が放送されるなど、WOWOW「連続ドラマW」枠の人気シリーズとなった。そんなシリーズの原点で在り、今ではすっかり刑事役のイメージも定着した木村にとって初の刑事ドラマ。強く、美しい、俳優・木村文乃の魅力がたっぷりと味わえる、至高のクライムサスペンスをぜひ堪能してほしい。 文＝鳥取えり