文字も読めず、計算もできなかった境界知能の息子が韓国の小学校でふた桁の足し算と引き算をできるようになるまで
小学1年生で難読症の疑いが判明した著者の次男。激しい競争を強いられる韓国の学校生活の中で、ストレスフルな日常を送っている長男を目の当たりにしていた著者は、次男については、勉強ができなくても自立できる道を親子で探ろうと模索し始めた。その中で判明したIQ59という衝撃の事実──。母である著者はどんな行動を取ったのか? 母と子の挑戦記の後編。(立花 志音:在韓ライター) 【実際の写真】次男が解いた九九のドリル 「今年の初めに決めた目標を、見事に達成しました。この努力は素晴らしいです。本人もこの1年間を、誇りに思っているようです。来年も頑張って下さい。きっとやり遂げることができるでしょう」 去年、小学3年生の終わりに次男が持ってきた通知表には、このように書かれていた。次男がこの1年間で、何ができるようなったかというと、文字が読めるようになったのである。 知能指数59という数値が出たのは次男が2年生の12月のことだった。筆者は一瞬、自分の耳を疑った。「えっ? 今なんとおっしゃいました?」 その小児精神科専門医の話によると、文字認識と計算の能力が特に低いが、難読症などではなく、普通に知能が低いので、それ相応な教育機関に行くことを勧めるというのだ。 筆者はその医者に聞きたかった。「知能指数59の子供を何人見たことがありますか?」と。 筆者は専門家ではないが、祖父が一時期、養護学校の園長をしていた頃がある。田舎の学校だったらしいが、祖父からも母からも色々な話を具体的に聞いていた。 個人的にも興味が出て、その手の本を何冊か読んだことがあるくらいだが、平均を100としたとされる知能指数の数字を聞けば、大体どのくらいかは少し想像がつく。 筆者はずっと次男を観察してきたが、自分の息子だという点を差し引いても、知能指数59にはどうしても見えなかったのである。
■ IQ59だとはとても思えなかったワケ 次男は普通にコミュニケーションをとることができ、日常生活に支障はない。一度通った道はほとんど覚えているし、前日の言いつけは、次の日にきちんと実行できる。しかし結果は結果なので、学校に提出する診断書をもらった。次の日に担任の先生に電話をして、個人面談をしてもらうことにした。 今までも完全に放置してきたわけでは決してないが、次男にとって韓国の普通教育が、限界であることは筆者もわかっていた。前々から、2年生の過程をもう1年させようかとも考えていたので、担任と面談の時間を持つのはグッドタイミングだった。 その当時の韓国の教育要領では、1、2年生でひとつのまとまりになっていて、3年生になるときに難易度がポンと上がるようになっていた。そして5年生になるときにまた難易度が上がる。 筆者は担任の先生に、医者に養護学校に行くことを勧められたこと、来年3年生から何かしらのアクションを起こそうと考えていることを伝えた。 担任の先生は非常に的確な対応をしてくれた。まずこの子を養護学校に送るべきではない、ということだけは確かな答えだった。 そして、来年また2年生をやり直すのであれば、転校が必要になるかもしれないということだった。それは筆者も覚悟の上だった。同級生と下級生、今の子供たちの相関関係の中で2年生をやり直すことは、やはり難しいだろう。 担任の先生が言うには、本人のことを考えると今の環境で対処するのがいいだろうし、教育環境の準備を模索できるはずだと言うのだ。 通っている学校では、生後24カ月から保育園で同じクラスだった友達もいて、ある程度「この子(次男)はこういう子(ちょっと遅れた子)」という認識はされていて、「助けが必要な友達」という位置になっていたようなのだ。 IQ59の診断書が小学校に渡って1週間後、次男は3年生から本人のレベルにあった個人授業を学校でしてもらうことが決まった。