中村米吉の#カワイイは世界を救う?第18回 “初舞台カワイイ”にメロメロ
「六月大歌舞伎」では、8歳の新・中村梅枝、6歳の中村陽喜、3歳の中村夏幹が初舞台を踏み、愛らしくも頼もしい、堂々とした姿を観客に見せつけている。中村米吉は、梅枝・陽喜・夏幹らと同じ“小川家”の1人として、「六月大歌舞伎」に出演中。夜の部「『南総里見八犬伝』円塚山の場」では、ヒロイン・浜路と、その恋人・犬塚信乃の2役を勤めている。 【画像】新・中村梅枝が登場!姫×姫感漂う、おしとやかな2枚。(他8件) このコラムは、“可愛すぎる女方”でおなじみの中村米吉が、身近なカワイイを紹介し、カワイイ×カワイイの相乗効果で、読者を癒やすことを目的としている。今回登場するカワイイは、初舞台の3人! 米吉お兄ちゃんの前で見せる、子供たちの無邪気な表情や、子供好きな米吉の優しいまなざしにほっこりしよう。ラスト、米吉ファン悶絶の“カワイイ4連発”にも注目だ。 題字:中村米吉 ■ “初舞台”を踏む、3人のカワイイが登場! 人生でたった一度。 それが初舞台。 襲名は数回なさる方がいらっしゃいますが、初舞台はどうあっても1回こっきり。 今月の歌舞伎座はそんな記念すべきイベントが3人分も味わえるのです!! ご周知の通り、今月の歌舞伎座は時蔵の叔父が初代萬壽となられ、お名前を譲られた梅枝の兄が六代目として時蔵をご襲名なさっておられます。 そして、新・時蔵兄のお子さん、大晴くんが五代目として梅枝を名乗り、獅童の兄の2人のお子さん、陽喜くんと夏幹くんが中村姓を名乗りそれぞれ初舞台を踏んでいます。 同じ小川家の人間として大変うれしく、小川家総出の今月の公演はとてもありがたいことだと感慨深く毎日を過ごしております。 そんな月に、どっかその辺でカワイイもんを拾ってきて紹介するなんて野暮な真似はできません。 さぁ、早速ご登場いただきましょう。 まずは新・梅枝くんです! 昼の部では普段は出てこない「妹背山婦女庭訓」の豆腐買の娘のお役を勤めています。 このお役は1960年四代目時蔵の大叔父の襲名の際、お祖父様にあたる萬壽の叔父さんが初舞台を踏まれたときにも勤められた、縁のあるお役。 なんとそのときの衣裳が64年間大切に保管されていて、それを今月着ているんだとか! なんとも素晴らしいことではありませんか。 普段の彼はわんぱくで子供らしい、明るく元気でとっても素直な少年です。 好きなものはブドウ味のハイチュウ。 笑うときになんとなくニヒルに笑うところに、なんだかお父さんのDNAを感じます。 お芝居好きで、引っ込んできては袖で芝居を見て、いじめの官女が長袴を踏まれて転ぶところをゲラゲラ笑いながら見ているそうです。 そんなにおかしいかしら(笑)。 官女が引っ込む扉の開け閉めの黒衣さんを手伝って、仕掛けの糸を引っ張ってみたり、舞台袖で「三国一の婿取り済ました! シャンシャンシャン!」と官女が騒ぐ中に一緒にいてみたり、歌舞伎座という遊び場にどっぷり浸っている姿は微笑ましくも頼もしいものです。 さて、カワイイ兄弟は夜の部からのご登場。 陽喜くんが持っているのは八犬伝の珠……ではなく、USJ土産のお菓子の入っていたテレサの缶。 今月、ご挨拶に来てくれるタイミングでこの缶を私の楽屋の中に隠し、見つけてもらうというゲームで遊んでもらっています(私が)。 缶の中にはアメやらチョコやらグミやらを日替わりで入れてあるんです。 お兄ちゃんのお好みはヴェルタースオリジナル、弟のなっちゃんのお好みはブドウ味。 2人で手をつなぎながら部屋を探し回る姿の可愛さたるや! とはいえ、“カワイイ”よりも“カッコイイ”方がうれしい2人ですから、隈取り、見得、立廻りが大好き。 八犬伝の幕外の引っ込みを、楽屋のテレビモニターで食い入るように見ていましたっけ。 「沓手鳥孤城落月」の乱戦の裸武者に憧れているらしいので、最近上演もされていないし、小さな裸武者がたくさん出てくる、ミニ小川家勢揃いで上演してみるのもありかもしれない! 3人ともお芝居が好きで、毎日楽しそうに遊びながらも、舞台に出れば一所懸命、大人顔負けの舞台姿です。 新たな一歩を踏み出した3人の進む道に幸多からんことを親戚のオジさんは祈るばかりなのです。 とはいえ、オジさんにだって君らみたいに可愛さ満点の頃があったんだぞ!! 見たまえ! この愛らしい初舞台の米吉おじさんを! ほらカワイイ。 あらカワイイ。 おっとカワイイ。 そらカワイイ。 今から24年前の(干支2回り!?)懐かしき我が初舞台。 遊んでもらったこと、怒られたこと、楽屋の香り、いろんなことを今でも思い出します。 今月初舞台の彼らにも楽しい思い出が残ってくれたらうれしいです。 残りあと僅か。みなさん見逃す手はありませんよ! オジさんは写真撮ってもらったときに約束してしまった、ご褒美のおもちゃを買いに行ってきます。 3人分かあ……(笑)。 □ プロフィール 中村米吉(ナカムラヨネキチ) 1993年、東京都生まれ。播磨屋。中村歌六の長男。2000年に中村米吉の名を襲名して初舞台。2011年から女方を志し、「鬼一法眼三略巻 菊畑」で皆鶴姫、「与話情浮名横櫛」でお富、「松浦の太鼓」でお縫、「仮名手本忠臣蔵 七段目」で遊女お軽、「絵本太功記」で初菊などを勤める。またアメリカ・ラスベガスで行われた歌舞伎興行では、2015年に「鯉つかみ」小桜姫役、2016年に新作歌舞伎「獅子王」白縫姫役で出演。2015年には「鳴神」の雲の絶間姫役の演技で十三夜会奨励賞、2021年には第42回松尾芸能賞で新人賞を受賞した。2022年7月に上演された「風の谷のナウシカ 上の巻 ―白き魔女の戦記―」、2022年12月から昨年1月にかけて上演された「オンディーヌ」では、それぞれタイトルロールを務め、昨年3・4月に上演された「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」、今年2・3月に行われたスーパー歌舞伎「三代猿之助四十八撰の内『ヤマトタケル』」東京公演では、それぞれヒロイン役を勤めた。現在、歌舞伎座「六月大歌舞伎」昼の部「上州土産百両首」で宇兵衛娘おそで、「『義経千本桜』所作事 時鳥花有里」で白拍子園原、夜の部「『南総里見八犬伝』円塚山の場」で犬塚信乃と娘浜路を勤めている。また10月には「ヤマトタケル」福岡公演に出演し、兄橘姫 / 弟橘姫、みやず姫を中村壱太郎と回替りで演じる。