錦織圭 No.1への行く手を阻むものとは
長いシーズンが終わったかと思えば、東京でテレビ出演&イベント三昧の1週間……国民的スターとなった錦織圭は、先週ようやく故郷で本当のオフを楽しんだことだろう。しかしそれも1週間の話で、もう来季に向けたトレーニング合宿をアメリカで始めるというのだから、毎年のことながらこの時期になるとテニスプレーヤーのタフさに頭が下がる。 【写真特集】コートの外の錦織圭 東京滞在中の記者会見では、「今年は今までで一番いい年になったので、来年も同じチームでいきたいと思います」と、マイケル・チャン・コーチを含めたチーム体制を継続していくことを明らかにした。「まずはグランドスラム優勝が目標ですが、これは何年かかかるかもしれない。調子や体力面、ピークをしっかり合わせていく大変さなど、グランドスラムにはいろいろあるので」と、逸るマスコミを牽制しながらも、「5年以内にナンバーワンに」という新たな宣言も飛び出した。今年手にした自信はこれほどまでに深いのだ。 そんな錦織の言葉を聞けば、ファンの期待はいっそう高まり、メディアも煽る。今季の躍進が、日本人の目にあまりに眩しかったから、この選手は躍進し続けるのだと信じて疑わない。もちろん期待するのは当然のこと。錦織もそれをプレッシャーに感じる以上にエネルギーに変える器だし、心配は無用だとも思う。ただ、「グランドスラム優勝」がどれほど大変かは錦織も口にした通りだ。 この10年間にグランドスラム・チャンピオンに上り詰めた選手はわずか8人しかいない。ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル、ノバク・ジョコビッチ、アンディ・マレーのビッグ4のほかは、マラト・サフィン(05年全豪)、ファンマルティン・デルポトロ(09年全米)、スタン・バブリンカ(14年全豪)、そしてマリン・チリッチ(14年全米)。一方、グランドスラムで準優勝はしたものの優勝経験はない、あるいは優勝できないままコートを去った選手は、同じくこの10年に錦織まで含めて8人いる。そこには、トマーシュ・ベルディヒ、ダビド・フェレール、ジョーウィルフライ・ツォンガといった、長年トップ10として活躍し、トップ5の経験もある選手も含まれる。錦織はこのグループからすぐに抜け出せるのだろうか。今、名を挙げた3人全員に錦織が勝ち越していること、対トップ10成績が他の3人よりすぐれ、今季に限っては唯一勝ち越していることなど、錦織の優位性は際立つ。それでもなお、行く手を阻むものがあるとしたら何か。