ロイヤルHDはコロナ禍を乗り切ったファミレス業界の“元気印”、お家騒動ぼっ発も(真保紀一郎)
【企業深層研究】 コロナ禍が明けて1年。ようやく外食産業関係者から笑顔が見られるようになってきた。ただし、完全に元に戻ったとは言い難い。しかも、その戻り具合は企業によってばらつきがある。コロナ禍をどう乗り切ったかによって企業間格差はむしろ拡大した。 小林製薬「紅麹」関連商品の自主回収続々…“寝耳に水”の取引先から噴出する怨嗟の声 ファミレス業界で、今もっとも調子がいいと評価されているのが、ロイヤルホスト(以下ロイホ)を運営するロイヤルホールディングスだ。 外食の好調さを示す数字が既存店売上高と客単価だ。ロイホの既存店売上高は、コロナ禍の2020~21年にかけて大きく落ち込んだが、21年10月から今年2月まで、29カ月連続で前年比プラスを続けている。 客単価にいたっては、16年3月~24年2月の8年間で、前年を下回ったのはわずか2カ月だけ。ロイホは他のファミレスよりも客単価が高いことで知られているが、今なお伸び続けている。これがコロナ禍からの回復に大きく役立った。 ロイヤルHDの前12月期の業績は、売上高1389億4000万円、営業利益60億7400万円。営業利益率は4.4%で、コロナ前の19年12月期を上回った。 ■利益率で他社に大差つける ちなみに他のファミレス、すかいらーくHDの場合、営業利益率は3.3%、サイゼリヤは3.9%だ。この数字だけでは大差ないと思うかもしれないが、実はロイヤルHDは他社と違い、売上高に外食事業が占める割合は44%に過ぎない。そしてその利益率は6.8%を超え、他社に大差をつける。 しかしわずか十数年前までのロイヤルHDはガタガタだった。当時は今と違って、ロイホが売り上げの8割近くを占める大黒柱だったが、その実態は増収減益と減収増益を繰り返すいびつな会社だった。 ロイホは江頭匡一氏が1971年に福岡県で第1号店をオープンさせたことから歴史が始まる。江頭氏は城山三郎氏の小説「外食王の飢え」のモデルにもなった立志伝中の人物。ロイホ以前から外食事業を手掛けており、69年には食材を1カ所で調理するセントラルキッチンを導入、さらにはフランチャイズ制を採用するなど、現在のファミレスの原型をつくっていく。これを真似るように全国でファミレスは大量に生まれ、親と子どもだけのニューファミリー層の圧倒的な支持を得た。 しかしやがて画一的な味が飽きられたこともあり、次第に客足が遠のいていく。ロイホも例外ではなかった。 業績が悪化すると不採算店を閉鎖するなどのリストラを行う。そうすると利益は改善するが売り上げが落ちる。利益が出るようになったので今度は店舗数を増やせば出店コストがかかり減益となる。これを繰り返しながら長期低落傾向にあったのが10年ごろまでのロイホの実態だった。 業績が悪くなると会社の雰囲気も悪くなる。11年には前会長と当時の会長が対立、最後は両社揃って取締役を退任するというお家騒動も起きた。 そんな危機的状況にまで追い込まれたロイホ、そしてロイヤルHDはいかにして蘇ったのか。次回で詳しく見ていこう。 =つづく (真保紀一郎/経済ジャーナリスト)