イランがイスラエルへ報復攻撃 次の焦点はイスラエルの対応
4月1日にシリア・ダマスカスのイラン大使館領事部が軍事攻撃を受け、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)の重要人物が殺害された。攻撃対象や目的、手段、そして過去の事例などに照らし合わせて、この重大な国際法の侵害は、イスラエルによる犯行以外には考えられないことは明白であった。 特に、標的となったIRGCのザへディ准将は、イスラエルが対応に手を焼いてきたレバノンの武装勢力ヒズボラとIRGCをつなぐ要の人物として知られていた。イスラエル北部国境の脅威であるヒズボラの能力を低減させることは、ガザ侵攻作戦を展開するイスラエルにとっては、計り知れない戦略的重要性を持っていた。 外交施設への攻撃は、イランが示唆したレッドラインとしての「本土」を侵したことになる。今年1月下旬に、ヨルダンの米軍前線基地で米兵3人がUAV(無人機)攻撃によって殺害された際、バイデン大統領は攻撃主体であったイラクの民兵組織を支援するイランの連座責任を問うと公言。これに対しイランのハメネイ最高指導者は、米国の攻撃が「イラン本土」に及べば、イランは徹底した反撃と報復を行うと警告している。 これは暗に、他国にあるイランの関連軍事施設への攻撃に関しては、黙認するかのような意味合いと捉えられ、事実、この時の米国の攻撃はイラン本土に及ばず、イランは他国にある自国関連施設が攻撃を受けたことについては口をつぐんだため、当時、イランと米国の間に高まった緊張や一連の相互攻撃はそこで終息した。その点では、イラン本土の「飛び地」に相当する外交施設の破壊は、イランが米国に発したメッセージを逆手に取る、イスラエルによる危険な挑発行為であった。 ■「徹底抗戦」の手前 イランは、昨年10月7日に起きたパレスチナ武装組織ハマスによるイスラエル領内への越境テロ攻撃以降も、イスラエルとの直接的な交戦と米国などによる軍事介入を回避することを目指してきたが、今回は「本土」の一部が攻撃を受け、さらには米国やイスラエルの“帝国主義的支配”に対抗する「抵抗戦線」を主導してきた手前もあり、この挑発に応じざるを得ない状況に追い込まれた。それゆえに報復攻撃の実施は必須となり、加えてイランの代理勢力ではなく、イランが直接手を下すことが避けられなくなった。