“就活リアリティーショー”に賛否 「ドラフト」や「推し活」などのエンタメ化は功を奏すか?
社会に出るにあたって学生たちの大きな壁となるのが「就活」こと「就職活動」だ。少し前であれば、わざと高圧的な態度をとり就活生のメンタルを試す「圧迫面接」などが問題視されたが、現代においてはまた違った試練が就活生たちに与えられている。 【写真】恋リア『オオカミ』のロマンチックなキスシーン このごろよく話題になるのは「就活の早期化」だ。就活解禁日は名目上、4年生の3/1~だが、そういった規則性も壊れつつある。3年生のサマーインターンの時点で選考は始まっているなんて話も聞く。その関係で、来年卒業となる2025年卒の内定率も昨年の下期には10%を超え、今年の一月には20%超えている。就活解禁まであと二ヶ月あるというのに、既にインターン経由を主に”持ち駒”を有している学生たちが多くいるということだ。 学生たちが社会に出るべくどれだけ早く動けるかといったことまで、現代の就活では重視されるようになってきている。 そんな訳で、履歴書を出し適性検査を受けて、何回か面接をして……といった定番の選考フローも、現代においては様変わりしつつある。 なかでも、自由度を増した就活の一部がどういうことかエンタメの方向に舵を切りつつあるのだ。 ■お仕事に”推しごと”があふれているから。推しプレゼン選考 会社単位で面白い新卒採用を一つの企画として行っているのが、『面白法人 カヤック』だ。 1月1日~3日の三が日にエントリーシートを提出した学生を対象に行った、2010年の「寿司面接」を皮切りに、毎年ユーモアに溢れた新卒採用企画を実施している。 そんなカヤックの今年の新卒採用企画のテーマこそ『推しプレゼン採用』である。 実施に先駆けカヤックは、「推しへの愛だけは、誰にも負けない。面白法人カヤックはそんな人を求めています。推しへの想いをカヤックにぶつけてください」というコメントを残している。 SNS上でも、現実でも、推しへの愛を原動力に実力を発揮している人は多いはず。XのポストとGoogleフォームの回答から応募できるので、気になった推し活に燃える25卒の就活生はチェックしてみるといいかもしれない。 ■25卒就活生、ドラフト内定に向けたプレゼン『キャリアドラフト』 タイトルの通り、ドラフトという形式で採用活動を行う就活番組だ。25卒の就活生たちが120社を超える企業の前で2分間のプレゼンを行い、二種類あるオファーの獲得を目指す。 企業からのオファーを勝ち取るため、選び抜かれた就活生たちは面接官たちからの厳しい指摘が飛んでくる質疑応答に臨む。 事前審査を通り抜けていることもあり、参加している学生たちは本当にみな優秀だ。それでも面接官や企業には響かないかもしれないというシビアさは、まさにオーディション番組らしい現実味を帯びている。 本来であれば、学生と面接官のみの隔たれた関係性で完結する就活が人目に晒されるという形で開催できるのは、エンタメに寛容になった現代だからこそできる取り組みだろう。 ■内定を賭けた、一泊二日の就活サバイバル 就活に関して有益な情報を発信するYoutubeチャンネル、『しゅんダイアリー』にて、就活生六人が大手PR企業の内定をかけて戦うサバイバル企画が全四本配信された。 就活生六人が一つ屋根の下で生活を共にし、面接・グループディスカッション・役員面接にチャレンジしていく過程でふるいにかけられてゆく。脱落した学生は即帰宅というサバイバル番組らしいシビアな縛りも設けられている。 二日目の最終面接に辿り着けるのは、選考の中で高得点を積み上げた上位3名のみ。一泊二日というタイトなスケジュールで内定者が決まることとなる。 就活は企業と学生のお見合いという言い方をよく聞くが、この番組はまさにそれを体現していると言えるだろう。 『キャリアドラフト』のような就活とエンタメを掛け合わせた取り組みによって、就活の過酷さを、人のチャレンジやひたむきさを内包することによって解消できたのなら、それは日本の就活を変え、エンタメの可能性を広げる素晴らしい一手になるだろう。 一方で、忘れてほしくないのは就活の本質、これから働く人と出会う、人と人同士が向き合うという部分だ。こういった趣旨が、エンタメ的な”魅せ方”によって潰されてしまうようであれば、それはいただけないと感じる。 今回紹介したように、就活のあり方は年々変化している。これを読んでいる方がすでに社会に出ている方か、それともこれから自らや周囲が就活に臨む方かどうかでも、受け止め方が大きく変わってくることだろう。就活をエンタメ的に見せるということが結果的に良かったのか、悪かったのか、数年後に自ずと答えは出るはずだ。
今世くいな