「強制送還ありきの制度では改善されない」 改正入管難民法施行 長崎・大村入管センターで外国人支援20年の牧師が訴える問題点
◆長崎県大村市内で学校教員を前に講演
西日本唯一の収容施設「大村入国管理センター」(長崎県大村市)で収容外国人の支援活動を続けている牧師の柚之原寛史さん(56)=佐賀県太良町=が6日、大村市内で学校教員を前に講演した。約20年間に及ぶ活動の経験から「人権がないがしろにされている」と入管行政を批判。収容や送還ルールを見直す10日施行の改正入管難民法の問題点も訴えている。 大村入国管理センターの見学のため現地を訪れた教員 主催は九州のキリスト教系学校の教員らでつくるグループで、西南学院中学・高校(福岡市)や鎮西学院高校(諫早市)など7校10人が参加。年に一度、人権や平和をテーマに勉強会を開き、国際的にも課題が指摘される入管問題を学ぼうと初めて取り上げた。 2005年から延べ4千人以上と面会し、支えている柚之原さん。講演では20人の事例を挙げながら問題点を解説した。帰国を拒む外国人の中には宗教や政治的な問題を抱えて難民申請する人が多いとし「難民認定率は1%前後で、先進国の中でも極端に低い。難民鎖国だ」と指摘した。 収容が長期化し、心身に不調が出るケースもある。ベトナム出身の男性は、収容期間が6年に及び、持病の治療も満足にできなかった。「長期の収容で精神的に病み、手術が受けられずボロボロになった」と振り返った。 センターでは2019年、長期収容に抗議したナイジェリア人男性がハンガーストライキの末に死亡し、その後も全国の入管施設で命を落とす事例は後を絶たない。柚之原さんは「入管は人間としての尊厳がない闇の世界。“強制収容所”は解体すべきだ」と非難した。 参加者は講演の後、センターを見学。約40分間収容者が生活する居室やカウンセリング室、運動場などを見て回った。終了後、西南学院中学・高の聖書科主任、三上梓さん(44)は「日本は外国人抜きでは成り立たなくなっているのに…。(入管には)命からがら逃れてきた人もいることへの想像力が必要だ」と語った。 入管難民法は、19年の死亡事案をきっかけに改正を求める声が高まった。支援団体などは収容の処遇改善を強く求めていたが、3回目以降の難民申請者の強制送還を可能とするなど監視や取り締まりを強化する内容になった。「迫害の恐れがある」などと反対の声が大きい。 柚之原さんは改正法について「強制送還ありきの制度では改善されない」と憤っている。 (松永圭造ウィリアム)